a few daysは「2,3日」と訳すのが日本の英語教育では通例になっているように思います。
しかし自分は,どう考えても2〜3ではない,もしくは同じような文脈で日本人なら「2,3の」とは表現しないような場面で使われているa fewに何度も出会ったことがあり,どう考えたらいいのか悩んできました。
まずは八ちゃんブログのこの記事から(数週間前に生徒に紹介した時は微妙に誤読した情報を伝えてしまいました)。
https://teamhacchan.wordpress.com/2013/08/02/a-few-days/
ネイティブの大学生に調査を行ったところ,2/3近い学生が,a few daysは「3日,もしくは3〜4日」という感覚を持っていたというのです。
2〜3日という感覚を持っている人はわずかに8人に1人程度。
一方,「数日」という日本語に対してどれくらいの数字を思い浮かべるかということを,教えていた学習塾で100人程の高校2年生に対して調査を行ったところ,「3〜4日」もしくは「4〜5日」だと考える人の割合が同じくらいでかつ大多数でした(選択肢を2〜3,3〜4,4〜5,5〜6,6〜7しか用意しなかったのはミスだった)。
僕個人について言えば,「数日」で思い浮かべるのは4〜7日くらいかなあと思います。
ということで,「数日」がぴったりだよね〜って授業でも話したのですが……。
『謎解きの英文法 冠詞と名詞』(久野・高見)にもa fewについての項目があったのは知っていたので早く読んでおくべきでした。
ここでは,severalとa fewを比較して以下のような仮説が立てられています。
(A) severalは3〜5あたりの数を,少なくない数として表す。(日本語の「数人,数冊,数個」などに対応)
(B) a fewは,3〜5あたりの数を下限として,話し手が期待値,基準値より少ないと考える数を表す。(日本語の「少数」に対応)
ひと昔前の英和辞典には,severalは「a fewより大きな数,manyよりは少ない数を表し,通例5〜6くらい」というようなことが書いてあったと思います。たぶんそういう記述を読んだからでしょう,自分もそんな感じのイメージでいたように思います。
まず,「severalがa fewより大きい」という誤解は以下の2つの実例で否定されます(以下の例文b,dについている*は,非文法的であるという意味ではなく与えられた事実を記述するのに不適格という意味)。
(2003年10月のカリフォルニア知事選挙でポルノ女王のMary Careyが0.06%の98票を得た,という状況)
a. √ A few voted for Mary Carey, a porn star.
b. * Several voted for Mary Carey, a porn star.
(2000年11月のアメリカ大統領選挙で,Ralph Naderが3%の278万票,Patrick Buchmanが0.4%の45万票を得た,という状況)
c. √ A lot of them didn't vote, a few voted for Nader or Buchanan.
d. * A lot of them didn't vote, several voted for Nader or Buchanan.
いずれの例でも,severalを使うと得票数がほんの数票であることになってしまうわけです。
また,a,cは実例ですが,「自分ならa fewではなくonly a fewにする」と言うネイティブもいるようです。
一方で*only severalというのは極めて不自然に響きます。
これは,a fewは「少ない」というネガティブな意味を表すのに対し,severalはポジティブな意味を表すからです。
e. A few students of this high school got into Boston University.
f. Several students of this high school got into Boston University.
e,fではa fewもseveralも「3〜5」くらいを表しますが,eだと「わずか3〜5人」というニュアンスになるのに対し,fだと「3〜5人も」という感じになるわけです。
*only severalにしてしまうと,onlyの持つ否定的ニュアンスと,severalのポジティブなニュアンスが衝突するわけですね。
また,someも「いくつか」を表すことがありますが,この本ではsomeとa fewが並べて使われると,someの方がa fewより大きな数を表す,ということを考察しています。
(2000年11月のアメリカ大統領選挙で,Ralph Naderが3%の278万票,Patrick Buchmanが0.4%の45万票を得た,という状況)
g. √ Many didn't vote, some voted for Nader, and a few voted for Buchanan.
h. * Many didn't vote, a few voted for Nader, and some voted for Buchanan.
hだと事実に反する文になってしまうようです。
気になってウィズダムを引いてみたら,上の高見・久野(2004)と同じような記述が載っていました。
① severalは通例3ないし5,6ぐらいの数量を表し[C]名詞だけに用いられるが,someは漠然とした数を表し[U]名詞にも用いられる。
② a fewは「少数の」の意味を表すがseveralは「少ない」の語感を持たない。そのためonly severalとしない。
③ severalは「いくつかの」の意味では通例冠詞と共に用いることはできない。the several changesは「そのさまざまな変化」の意味。
他の英和も,最新版はこんな感じになってるんですかね?
それにしても③はおもしろいですね〜。
severalがdifferentみたいな感覚で使われるんですね(differentを単に「違う」という意味だと教えるのも間違ってると思うんですよね,「何と違うのか」がdifferent from 〜 のように示されていない時は「様々な」という訳し方をすべきです)。
ウィズダムには他に,以下のような例文が載っています。
i. They went their several ways.(彼らはめいめい別々の方向に進んだ。)
j. Several men, several minds.(⦅ことわざ⦆十人十色)
k. several kinds of information about the election(選挙に関するさまざまな情報)
anyについての話も書きたくなってきた