悪い男 | シンシアリー * 心のままに

シンシアリー * 心のままに

何気ない日常です。

私は、ここにいます。

これは、インフルエンザにかかる前の出来事ですウインク


来年こそ、会社を黒字にします!
頑張ります!
ついてきてください!


若社長から、今まで見たことないくらいの奮起を感じました。


世話のやける弟…
失礼ですが、若社長の事は、いつもそんな風に思っていますあせる

とにかくデスクワークの嫌いな若社長は、
事務所にいた試しがありません。


俺は現場畑な人間だから!

そんな若社長も、ようやく落ち着きを取り戻しました。

仕事8割、愛人2割!

まぁ、それでもかなりの進歩です照れ


若社長に頼まれていた取引先の部長さんとの会食ナイフとフォーク
ふと、行ってみる気になりました。



部長さん、
本当に、いきなりステーキ、連れて行って下さいました爆笑
粋な方ですキラキラ
楽しく談笑させていただき、
くるみさんのような素敵な女性がいる会社なら、今後も良きお付き合いを!との快いお返事おねがい

勢い付いた若社長に頼み込まれ、初めて、会社関係のパーティなるものに参加しました。

ゼネコン、関連会社、下請けさん、
総勢50名。

紅一点で、接待させていただきました

そこへ、我が社と、以前から黒い噂のある人物が登場。

一瞬で緊張が走りますキョロキョロ

そこそこ、名の通る大物フィクサー(Tさん)です。

先代の社長は、そのような方との付き合いを禁じてきましたが、若社長の代になり、
面には出せない案件があると、決まって、Tさんの名前が出るのです。

まぁ、私には関係ないですし、
むしろ、若社長の交友関係には、眉を顰めることばかり。

二軒目のクラブで、私の隣に、Tさんが…


ずっと見ていると、君はなかなか頭のきれる女だね! 変に媚びるわけじゃなくて、
でも上手く男を立てるんだね。
見事だよ!
乾杯しようか?

いえ、私は、車だから飲めないので!

代行を呼んであげるから、一杯だけ、
どう?

素人の私には、名前のわからないシャンパンを頼んでいました。

おぉー、という歓声が上がったので、かなり高級なのでしょう。

乾杯をしました

どうぞ、飲みなさい!


お気持ちだけ…

Tさんは、静かに微笑みました。

お店のママが、
いいお酒なのよ、
くるみさんいただいて!

ママ、ごめんなさい。
この方と少しお話がしたいだけなのです。


いいよ、ママ、下がって!

Tさんと、カウンターに座りました。

飲めないのに、断りきれずに来てしまいました。ごめんなさい。

いや、いいんだよ。
くるみさんとは、オレンジジュースで乾杯しよう!


くるみさん、
僕の事を知ってるかい?

はい、存じております。
なので、少し構えていますが、
怖くはありません。
まず、お伝えしたい事があります。
ご無礼を承知で申し上げますが、
若社長は、お人好しで面倒見が良くて、とてもいい人なのですが、未だにかつてのヤンキー気質が抜けません。
なので、あなたの事を、親分だと思って、
憧れているようです。
今、会社の経営は火の車で、明日をもわからない状況です。
どうか、うちのような零細企業にあまり深く関わらないで下さい。


なるほど!
くるみさんは、社長の事を慕っていると言うことかな?


勘ぐられるような仲ではありませんが、
会社の、一経理のおばさんとしての老婆心です!

なかなか面白い娘だね。
あまり、面と向かってそんな風に言われる事がないからね。
恋愛も、そう?
狙った獲物は、逃がさない?


いえ、全然ダメです。
いつも、空回りしてます。


正義感が強くて、面倒見が良くて、
いい人過ぎて、
悪い女になりきれない…
そんな感じかな?
自分に嘘つく必要なんてないんだよ。
真っ直ぐ、進めば道は開ける。

くるみさん、こっちを向いて!

Tさんと向き合い、ジッとお顔を見ました。
鼻筋の通った、綺麗なお顔。


綺麗…
思わず、呟いてしまいました。

この人は、この甘いマスクで、数え切れないほどの女を意のままにしてきたのでしょう。


お帰りになるお客様をタクシーにご案内し、戻ってくると、
入り口に、Tさんが立っていました。


今夜は珍しく酔ったよ!
楽しいお酒を飲んだから。
くるみさんは、髪がとても綺麗だね。
肌もすごく綺麗だ。


Tさんは、私を引き寄せ、
髪をかきあげ、
耳にキスをしました。

とてもいい香りがして、
ドキンと、心がなりました。


Tさん、私は普通の主婦です。
相手にしても、つまらないですよ。
ご自分に相当な自信がおありなのでしょうけど、暇つぶしに使わないで下さい。
私、そんな簡単な女じゃないので。

ハハハ、僕はタイプじゃないか笑


いえ、
はっきり言って、そういう強引なタイプ、
嫌いじゃないです。


これは、私自身に言い聞かせている言葉。

ただ、言葉だけ…
ただ、見つめるだけ…

そんな、恋愛はもう要らない。

私は、いつも待っていた。

抱きしめて、
ずっとずっと、大好きだったよ、

って、

息が出来なくなるくらい、
強く、強く、抱きしめて欲しかった。


もう、そんな事、何も願わない事にした。

そうしたら、寂しさと身軽さが同時にやってきて、
少しずつ、私の見える世界が変わってきた。


くるみさん、
また、食事に誘ってもいいかな?
若くて、綺麗なだけの女はつまらない。
もう、そういうの、飽きた。


ひどい笑
どう言う意味ですか?
私、ヤクザさんの知り合いは要りません。


最後は、そんな軽口を叩けるまでに仲良くなったし、色々あって写真撮影NGなTさんが、一枚だけだぞ!って、笑って写真撮ってくれたし、
若社長に、
いい事務員さんだ!
大事にしろ!って言ってくれたらしいし、

あぁ、女って、やっぱり強引で、
ちょっと悪い男に弱いな…って、
再確認しました。

でも、所詮、ヤクザさんはヤクザさんで、
怖いから近寄らない方が良いって思うし、
心を持っていかれる事はないけれど、
そんなアウトローな人と話をする機会って、主婦の日常にはないから、
少しドキドキして、
刺激的な夜でした。


帰り道、丸くて綺麗な月を眺めながら…

やっぱり私は、


あの人の事を想いました。