恋愛はただ性欲の詩的表現を受けたものである。
少なくとも詩的表現を受けない性欲は恋愛と呼ぶに価しない。

                                             ー  芥川  龍之介  ー





16時00分



リナとあたしは、リナの車の中に待機していた。

五十嵐は、あたしが来ることは知らないらしい。

16時00分から19時00分まで、リナとラブホに行きやる事やって、

その後二人で夕飯を食べに高級レストランに行く、という予定らしい。

夕飯のあとにラブホじゃないのか。

って、そんな他人のデート事情どうでもいい。

とにかくあたしは、何も話さなくていいと。

リナが話すことにひたすら同意してればいいと言われた。

そして三人でホテルに入ることは、HALには内緒でという体にするらしい。

ラブホ周りには、大量の探偵が張ってるらしい。

全くもって、誰もいない。

本当に探偵いてくれてるの?

一台だけ、怪しい車がラブホ近くに路駐してあったけれど……。



リナ「不安そうね。大丈夫。ラブホの従業員も買収済み。警官も二人近くにいる。監視カメラも大量に設置済み。もちろん部屋にもね?」

あたし「リナも凄いなぁ。やる事大きすぎだよ。上の組織なみ」

リナ「上の組織と一緒にして欲しくないわね。あんな汚い組織と」

あたし「やっぱ汚い組織なの?」

リナ「一部の上流階級だけね。他の9割は皆、ボランティアしたりいい事しかしてないわ」

あたし「オカルト信者の陰謀論っていうのは本当だったんだ…」

リナ「あ、五十嵐が到着したって!」

あたし「……!」

リナ「いい?作戦通りに。ムカつく事あっても、今回ばかりは言い返したりしないでね?」

あたし「りょ、了解しました」



触られたら思わず蹴り入れちゃいそうだけど、それも我慢しないといけないのか。

とにかくリナに、従順に。

ひたすらそれをすればいい。

リナと二人で腕を組み、ラブホへ向かうと

フロントに五十嵐が一人で立っていた……!

そして五十嵐は目を丸くした。



五十嵐「な!?」

リナ「先に部屋入ってて?後から行く」

五十嵐「な、なんで」

リナ「三人でしたくなっちゃって。それでもいいかしら」

五十嵐「いや、それはいつもの事だけどなぜ愛美さんが……!?」



いつもの事なのかい!!

激しく心の中でツッコミを入れた。



リナ「あら。聞いてないの?愛美は私の一番の相方になったって」

五十嵐「は……!?」

リナ「とにかく先に入ってて?こんな所記者とかに写真撮られたら厄介よ?」

五十嵐「そ、そ、そうだね……」



五十嵐はそそくさと一人でエレベーターに乗り込んだ。



リナ「ふぅ。第一段階突破かしら」

あたし「ねねね。大丈夫?一緒にホテル入るところ撮らなくても」

リナ「大丈夫。監視カメラあるから」

あたし「な、なるほど」



怖い。

五十嵐を上手く丸め込めるのか。

本当に手を出されないのだろうか。



リナ「かなり警戒してたから、少し不安ね。作戦変更してもいい?」

あたし「ど、どういうふうに?」

リナ「油断させるためにいつも通りにしたいの……私が愛美を愛撫する」

あたし「え!?」

リナ「五十嵐に体は見せないようにするから大丈夫。声だけ出してくれれば」

あたし「は、はず……!」

リナ「最初だけの我慢よ」



最初だけって。

リナは同じ女だから、やたらと上手いんだよな……。

HALも上手いけど、やはり男女の差がある。

悲しいかな、女の喜ぶ部位は、女が一番知っているものだ。

間違えてあたしがリナにムラムラしてしまったらどうしてくれるんだ。

リナじゃないとイケない体になってしまったらどう責任取ってくれるんだ。

違う意味で、怖くなってきた。



エレベーターに乗り、403号室に到着した。

廊下の上をチラチラ見ると、明らかに取ってつけたような小さなカメラがあちこちに設置されていた!

五十嵐は本当に気づいてないのか?

リナがチャイムを押すと、五十嵐がドアを開けた。

大丈夫だよね?

中に男が大量に潜んでたりしないよね?

そんな不安は、五十嵐のオドオドした表情で一発で吹き飛んだ。




五十嵐「こ、この事、HALさんは?」

リナ「知ってるわけないでしょ。バレたら殺されるわ」

五十嵐「そ、そうだよね?大丈夫だよね」

リナ「愛美も実はバイなのよ。私のテクで何度もイッちゃうの。HALさんとはマンネリらしいわよ。ね?愛美」

あたし「うん。やっぱ女同士のほうがね、リナはあたしの気持ちいいところ全て知ってる…」

五十嵐「そうだったのか。良かった。じゃ、楽しめそうだね」



この言葉に、猛烈に殺意が沸いた。

お前となんか楽しむかボケ!!

HAL以外の男には興味ない!!

という心の叫びを必死で飲み込んだ。




リナ「でもね、愛美は三人でするの初めてなの。先に私が愛美をリラックスさせたいの」

五十嵐「そうか。初めてじゃ緊張するよね。大丈夫、俺も慣れっこだから待ってるよ」



五十嵐は初めて、ニコッと優しい笑みをあたしに向けた。

五十嵐……あんた……

そもそも妻子持ちやろ。

何やってんだコイツは……。

奥さんと子供が可哀想すぎる。



リナ「じゃ、最初は覗かないでね?」

五十嵐「おけおけ。あ、いつもの使わないの?」



五十嵐からとんでもない物を受け取るリナ。

大人の、あれだ。



リナ「……もちろん、使うわよ」

五十嵐「あとで俺にも使わせてね」

リナ「いいわよ」



いいわよじゃないわ!

五十嵐が変な妄想してるかと思うだけで吐き気がする!

リナがお風呂場にあたしを連れ込んだ。




リナ「思いっきり、好きなだけ喘いでね?」



リナは小声で言った……。