実力の差は努力の差。
実績の差は責任感の差。
人格の差は苦労の差。
判断力の差は情報の差。

                                        ー  武田  信玄  ー





Lowyaが直々に来た……!?



工藤「雄大さん!Lowyaらしき人物がフロントから侵入する!すぐ隠れて!!」



工藤が発言すると、既読が一気に40ついた。

この既読の付き方、毎回怖いのだが。

学長は特に返事をしなかった。

隠れるのに急いでるのか

はたまた、怪しい五人組の鷹派に見つかったのか……!?



木の裏に隠れて頭だけ出してフロント方面を見る。

黒塗りの高級車から、シルバーの髪、サングラス、春のうららかな季節にそぐわない

黒のロングコートの男が後部座席から降りた……!



風「あ、あれ、あれがLowya!?」

あたし「……たぶん。あたしを助けてくれた時と同じ人……」

風「背高い……てかめっちゃかっけぇ……セフィロスみたい……」 

あたし「でしょ!?FF7のセフィロスでしょ!?」

風「愛美、話盛ってんのかと思ってたけどガチでセフィロスじゃん…」

あたし「セフィロスが短髪にしたらまさにあれだよね!?」

川嶋「セフィロスが何なのかわかりませんが、そんなに頭を出さないで。見つかる」

工藤「送迎車がこっち来るから一旦駐車場降りるぞ!」

あたし「マジか!」



セフィロス……もとい、Lowyaらしきイケメンと

男三人が降りたところで、黒塗り高級車が発進した。

あたし達は走ってまた階段を駆け下りる!



あたし「や、やばい。喉と喉がくっつく」

風「水飲め!」

あたし「ん、飲む」



緊張しすぎて、急いでバックからペットボトルの水を出して飲んだ。

ていうかこんな時なのに、風邪で喉が痛くて辛いと気づいてしまった。

頭も痛いし、気持ち悪いし、喉痛いし絶対熱出てきてる。




川嶋「……駐車場には停めずに一度去ったらしい」 



地上を確認していた川嶋が手招きをした。



風「ついにLowyaと対面か……」

あたし「この変装でバレないかな……マスクとキャップと眼鏡じゃ、明らかに変装してます感満載じゃない?」

風「確かに」

工藤「見つからないように行けばいい」




学長「トイレに隠れた」

学長「Aチームはもう報告はしなくていい。演技に徹しなさい」

学長「絶対に怪しまれないように徹底的に談笑してなさい」

学長「工藤たちは、今どこに?」

工藤「外です。見つかってはいません」

学長「そのまま入ってこないように隠れてて」

工藤「了解」



風「な……!?Aチームほったらかして雄大さんはトイレに隠れてて俺達も行くなって!?
みんなは大丈夫なの!?」

あたし「それな……一番危険なの、チームメンバーじゃんか。あたしたちチームリーダーなのに、ここで隠れてるなんて……」

川嶋「俺が行ってくる」

工藤「また川嶋はすぐ命令違反する…」

あたし「大志たち、無事だよね…ちゃんと演技上手く出来てるかな…」

風「不安すぎる。隠れながらでいい、少しでも近づきましょうよ!?変装してるし!」

工藤「しかし」

あたし「チェックインしよう!普通の客として!」

工藤「それはやり過ぎじゃ」

風「大賛成!それならLowyaも気づかない!」

工藤「いやいや、愛美さんLowyaとガッツリ会ったんでしょう?顔バレしてますよ」

あたし「その為に変装してんじゃん!」

川嶋「ここでグズグズしてる暇なんてない。すぐ行こう」

工藤「わ、わかったわかった!とりあえず川嶋と風愛友と愛美さんはトイレへ!俺がチェックインする振りをして様子見る!」

風「……ま、いっか。それだけ近寄れるなら何かあってもすぐ飛び出せる。とりあえずそれで手を打ちますよ」

あたし「風……あんた何様……」

工藤「くそ……こんな事になるなんて……HAL様に怒られる……!」

風「大丈夫ですよ。いくらLowyaでも鷹派でも、こんな高級ホテルの公の場所で乱暴しないですよ」



とか言いつつ、風は両手でポキポキと指を鳴らしている。

やはり、暴れる気満々だ。

ここからは普通に歩いて、客の振りをしてホテルへ入る……。



ウィーン



自動ドアが開く。

Lowyaや、怪しい大人たちは、いない。

フロントの人が、恭しくお辞儀をした。



工藤「みんなトイレへ」

川嶋「了解」

風「愛美も!」

あたし「ふぇっ!?」



男子トイレに連れてかれた!!



あたし「や、や、やばいって男子トイレは!!」

川嶋「大丈夫です。誰もいません」

あたし「いませんって!入ってきたらどーすんの!?」

川嶋「追い出します」

あたし「んな殺生な!!」

風「いや、愛美は普通に個室に閉じこもってれば大丈夫」

あたし「だ、男子トイレなんてっ!」

風「女子トイレに一人のほうが危ないでしょ」



無理やり個室に押し込められた。

うぅ……男子トイレ……。

個室だから特に女子トイレとは変わらないけどなんかやだ……。

全く落ち着かない。

落ち着くために、グループラインを開いた。

でも、学長が居ない?

フロントにいた学長がトイレに隠れたってことは

絶対このトイレのはずだ。

なのに入った時は誰もいなかった……?



あたし「か、風……?聞こえる?」

風「聞こえてるよ」

あたし「学長は?」

風「あ……!?」



そこから無言になった。



あたし「ちょ、黙らないでよ不安になる」



「…………」



返事がない。

ただの屍のようだ。



あたし「ちょ、男子トイレに女子を置きっぱなしにして消えるとかやめてよね…?」

風「わかった、開けるから鍵開けて入れて」

あたし「よ、良かった、いたのね」



鍵を開けると、風と川嶋が入り込んできた!



あたし「ちょ、三人はさすがに狭くない!?」

川嶋「雄大さんがいない」

あたし「さっきそれあたしが言った」

川嶋「工藤も戻ってこない」

あたし「……」

川嶋「フロント覗きに行ったけど、工藤も消えていた」

あたし「…………」



息が。詰まる。



風「ひと暴れしますか」

あたし「……...」

川嶋「愛美さん」

あたし「…………」

川嶋「何がなんでも、ここを出ないで下さい」

あたし「…………」




やだ。



そう言いたいのに、また声が出ない。



風「愛美に何かあったら、HALさんが悲しむんだよ」

あたし「…………」

風「俺、HALさんだけは悲しませたくないんだ」

あたし「や、やだ…………」



その時



グループラインが鳴った。



学長がもう報告するなと



演技を徹底しろと、言ったのに



三人同時に、ラインを確認した。



Aチームメンバーからだった。



「ばれた」

「隣のメンバーが」

「君たちAチームの子だよね?って」

「銀髪の男の人に話しかけられてる」




銀髪の男……。



Lowyaだ……!



風「行きましょう」

川嶋「うん」

風「愛美はここにいてよ!」



二人は個室から

出て行った……。