男二人と女一人で

ホテルの部屋にいた。

もちろんこんな経験、生まれて初めてだ。



あたし「マジでやめて欲しいんだけど。一人で寝かせてくれない?」

佐藤「雇い主からの命令なので」

あたし「3Pしろと!?」

佐藤「何言ってるんですか。護衛です」

あたし「あんたたちも他に部屋取ってたでしょうが!ちゃんと鍵閉めて外に出ないし安否確認何度もしてあげるからおとなしく自分の部屋に戻ってよ!?」

間宮「三人部屋がないから仕方なく部屋取っただけですよ。邪魔はしませんのでお好きにお寛ぎ下さい」

あたし「あーーーーーーーもう!!」




いくら説得してもダメだ。

巨体の二人は、テコでも動かない。

逆にHALの方が問題だ。

男二人とホテルの同部屋で寝ろなんて!

彼氏の言う言葉か!?

あれからイタリアンレストランでマモルに奢ってもらい

マモルはフラフラしながらも、元気よく帰って行った。

あたしは外観からしてなかなか小綺麗な

ビジネスホテルに泊まることにした。




あたし「・・・あのさ。今からシャワー浴びるんですけども」

間宮「はい」

あたし「まさか、中まで入るの?」

間宮「・・・・・・・・・・・・確認してみます」




確認するような事じゃないだろがい!

ボディーガードっていうのもなかなか頑固だ。

臨機応変という言葉を知らない。




間宮「返事が来ました。中までは入るなと」

あたし「そりゃそうでしょうねぇ!?」

佐藤「では、自分は部屋をくまなく捜索します」

間宮「了解。自分はシャワー室の前で待機します」

あたし「部屋の中をくまなくとは!?監視カメラとか爆弾とか仕掛けられてないかって!?」

佐藤「おお。よくわかりましたね」

あたし「おお。よくわかりましたね。じゃないわ!!そんなもんあるわけなかろうが!!」

佐藤「100%有り得ないとは言い切る事は出来ません。1%でも可能性がある限り、そのリスクを見つけ、先に潰すのが我々の任務です」

あたし「ご最もです!!それなら今急に地球壊滅するほどの巨大隕石降ってきたらちゃんと守ってくれるんですね!?」

間宮「任務遂行してるだけなのに、ここまでダメ出しされるとは思いませんでした・・・」




あたしのツッコミは止まらない。

いや、頭では理解してるんだ。

コイツらはボディーガードとはいえ、

会社勤めしているサラリーマンと変わりない。

給料制なんだから。

コイツらとか言っちゃってるけど。

あたしに少しでもケガとかがあったら

ボディーガードの会社の方にクレームが行くんだろう。

そうしたら減給とか、降格とかもあるんだろう。

あまり言うのも疲れるし、可哀想になってきたからやめた。

下着と浴衣を持って、シャワー室に入る。

なんでわざわざ着替えを持って

こんな狭いシャワー室に入らなきゃならんのだ。

シャワー出すだけで自分の着替えが濡れてしまう!

・・・寒いから湯船入りたいな。

すんごいちっちゃい浴槽だから諦めた。




ササッと髪の毛と体を洗った。

こんな急いだのはアキラのマンション以来・・・

あの日、アキラに襲われて嘔吐して

シャワー借りたんだっけ。

でも何度もアキラが入ってきて焦った。

アキラ・・・・・・。

もうあの日から

計画実行した日に、命を断とうとしてたなんて・・・。



ふと、後ろを振り返る。

すりガラス越しに、間宮の後ろ姿が見える。

覗いてはないのね。

まぁこんな貧乳覗きたいと思う男はいないか。




急いで体を拭いて、パンツ履こうとした時

視界の端に

嫌なモノが

目に入った。

どうか・・・

どうか神様

目の錯覚であってくれたまえ・・・






















「ぎゃあああああああっ!!」





バァン!




「どうしました!?」



案の定、佐藤と間宮は普通にシャワー室に飛び込んできた。

裸見られたー!!

パンツも履ききってないで腰抜かしてひっくり返ったから

全身普通に見られたーーー!!





あたし「ゴッ・・・・・・ゴキブリ!!!!!」

間宮「・・・・・・・・・」

佐藤「・・・・・・・・・」

あたし「ボーッと突っ立ってないでやっつけて!!」

間宮「あぁ・・・はい・・・」




間宮は呆れた顔ではぁ・・・とため息をついて

手のひらでバンッ!と

ゴキブリを潰した!!




「ぎゃあああああああ!!」



佐藤「あ、あの、うるさいですさっきから。ホテルの人が来ますよ?」

あたし「当ったり前でしょ!?素手でゴキブリ潰す人初めて見たっ!!!」

間宮「普通ですよ・・・こんなの人間を襲うわけでもないのに・・・」

あたし「あんたの普通はあたし達の世界では普通じゃないけどね!?手洗ってよ!?てかゴキブリ捨てて!」

間宮「捨てますし洗います。我々はボディーガードであって、召使いではないんですけどね」

あたし「もうやだぁぁぁぁぁ・・・・・・」




情けなさすぎて、涙が出てきた。

貧弱な裸見られたんだけど・・・。

別に減るもんじゃないからいいけどさ。

もっとナイスバディなら、堂々と見せてあげたのに・・・。

しかもせっかく体拭いたのにひっくり返ったから

また体が濡れてしまった。

半泣きで物凄い速さで体を拭いて

とんでもない速さで着替えてみせた。




あたし「あ・・・あの・・・」

間宮「はい」

あたし「ありがとうございました・・・」




するといきなり、ふっと間宮が笑った。

初めて間宮の笑顔を見た!!




間宮「・・・いいえ。任務ですから」

あたし「な、なにその半笑い・・・」

間宮「いや。初めてお礼を言われたなと思いまして」

あたし「あ・・・」




あたし守ってもらってるというのに

一度もありがとうって言った事なかった!?

あたしが一番の無礼者じゃないか!





間宮「しかもゴキブリ如きでお礼言われるとは」

あたし「いや、ほんとそれはごめん・・・」

佐藤「そうそう。いつもタメ語だし」

あたし「・・・・・・何も言い返せないや」

間宮「それより、もう0時回ってるのに寝ないんですか?」

あたし「まだ眠くないや。コーヒー買ってきてくれない?」

佐藤「我々はボディーガードであり、パシリではありません。あなたがロビーの自販機までコーヒーを買いに行くのならもちろん護衛しますが」

あたし「だよね・・・・・・」

間宮「ルームサービス頼んでは?」

あたし「その手があったか!おお!しかも480円!?やっすい!」




あたしはウキウキで、ルームサービスを頼んだ。

そしたら、なぜか間宮と佐藤は部屋の外に出た。

あ、そっか。

ツインの部屋で一人で頼んでたのにここに三人もいたら

ホテルの人に文句言われるのか。




ホテルマンがコーヒーを運んで来た。

このまま、ホテルマンが出た瞬間にドア閉めてロックしちゃえば

間宮たちを追い出せるのでは!?




・・・と思ったけど、ゴキブリが怖くて

追い出すことは出来なかった。




間宮「眠れないのにコーヒー飲む人も初めて見ましたね」

あたし「そーお?コーヒー飲むと寝れなくなるって都市伝説じゃない?コーヒーに含まれるカフェインって案外少ないらしいし。それならレッドブルとかの方が断然寝れなくなるでしょうに」

佐藤「眠れなくてレッドブル飲む人はいないでしょう」

あたし「まぁいいや。そろそろ寝ようかな」

間宮「了解です」

あたし「・・・あんたたち、寝ないの?」

佐藤「交代で寝ます」

あたし「どこで?」

佐藤「床です」

あたし「寝る方は自分が取った部屋で寝ればいいのに」

間宮「それじゃ護衛になってないでしょう。仮眠するだけです」

あたし「床で寝られても・・・気になるからそこで寝なよ。ここツインなんだし」




隣のベッドを指さした。



佐藤「・・・いいんですか?」

あたし「床で寝られてる方が気になって眠れないから」

佐藤「では、遠慮なく仮眠させていただきます」



歯磨いて戻ったら

間宮は立ったまま。

佐藤はもんのすごい爆音のいびきをかいて寝ていた。



あたし「はっや!?」

間宮「・・・いつもこのいびきで自分も寝られないんですよ」

あたし「いや、これは寝られないわ」

間宮「佐藤はいびきかかない手術でもした方がいいです」

あたし「・・・あたし寝れるかな」

間宮「愛美さんが寝付くまで起こしましょうか?」

あたし「だ、大丈夫。こんなに疲れてるから悪いもん」




ベッドに入って、電気を消した。

それでも、間宮は棒立ちだ。

寝るところを見張られてる上に

隣で暴走族の走りなみの爆音のいびきかかれてたら

いくら図太いあたしでも、眠れるわけが無い。





でも一瞬で気絶した。