今回は俺の実体験ではなく、以前本堂の大掃除を手伝った、中王区にある寺で聞いた話だ。
 そこじゃ人形供養もしていて、毎年半端ねえ数のぬいぐるみとか、人形とかが送りつけられてくる。収納する部屋もあって、ずらっと並んでいる様子は、住職さんを除いてみんな、入りたがらないらしい。
 話は、その住職さんから聞いた。
 
 人形供養をする前夜は、部屋からうめき声や、獣の鳴き声、また歌声なんかもしてきて、それは賑やからしい。
 
 事情があって主人のもとを離れた奴らばかりだから、何か言いたいことや、訴えたいことがあっても不思議じゃないだろうというのが、住職の考えだ。
 
 賑やかな夜があけて、朝になり、人形供養をする日になった。
 収納部屋から出して、御神酒をかけて火をつけて燃やしながら、燃え尽きるまで住職は目の前で、お経をあげるんだそうだ。
 
 目を閉じ、言葉のひとつひとつに念を込めてとなえていると、燃えさかる炎から「嘘つき」「助けて」「熱い」など、恨めしげな声が、ぱちぱちという炎の弾ける音に混ざって聞こえてきてしまう。だからこそ、目を閉じているそうだ。
 
 以前、大きな寺の坊主が人形供養を見学しに来たが、最中に尻尾を巻いて出て行ってしまったというんだ。
 
 ずるり、ずるりと炎の中から、人形が這い出してきたらしい。
 
 半分溶けた顔をきっと、坊主に向けて「家に帰して」と訴えたそうだ。
 
 住職さんの足首には、たくさん、やけどの跡がある。
 見せてもらったが、小さい、子どもの手みてえな、やけどの跡だった。
 
 いろいろと、言えない事情があるんでしょうねえ。
 住職は穏やかに話して、見学しますかとすすめられたが、お断りした。
 
 俺の話はここまでだ。