片想いはもっとも美しい時間である、とは誰が言っただろう。
そんなことを考えながら、夏空を見上げる午後2時。じりじりと肌を焼く太陽を恨めしく見上げながら、来るかどうかわからない相手の来訪を待っている。
理鶯さん、理鶯さん。
微かに聞こえてきた、呼び掛ける声に口元がほころんでしまうのを、こらえている情けない自分がいる。
いつも落ち着いていて、ときどき天然で、理鶯はマジで面白いヤツだよな。
本当に、珍しい性格ですよ。
左馬刻と銃兎がしばしば口に出す言葉に馴れて、昔の自分をだんだん思い出せなくなっていく。いや、思い出そうとしないんだろう、たぶん。
同じことを。
彼もまた、同じことを自分に対して思っているんだろうか。
期待なんかしていないと言い切れば嘘になるし、向けられる笑顔は小動物みたいに愛くるしい。
彼は、有栖川はどうなんだろう。
「理鶯さーん、スーパーアイス特売だから買ってきちゃったー!熱中症になったらやばいからさー!」
でかいビニール袋を両手にぶら下げ、頭の上で振りながらやってきた相手に、緩やかに微笑み出迎える。
胸は高鳴っている。
耳が気温のせいだけじゃなく熱い。
「どうしたんすか?理鶯さん。あーそっか、甘いもん食わないんすよね、やらかしたなー、かき氷も無理すか?」
捲し立てる有栖川に、たまらなくなる。
手を伸ばせば、頬に、髪に触れられる。
けれど、できない。
臆病さに、嫌気がさす。
どうか気付かないでほしい、どうか、仲がいいヨコハマの軍人で終わってほしい。
鈍感なヤツだ、ここまで毎回歓迎すれば、気があることぐらいわかるはずだ。
「……理鶯さん?」
見上げる眼差しはまっすぐで、どこまでも痛い。
「いや、気遣い感謝する。かき氷なら、ありがたくいただこう」
「マジっすか?よかったー、スロで当てたんでお礼にと持ってきて正解でした!」
優しくならないように、有栖川の背中をポンと叩いた。
もどかしく、たのしい。
恋とはそういうものだろうか。
うまそうにバニラアイスを口に運ぶ有栖川を、こっそりと、愛しく見た。
好きと今日も言えないまま。