俺っちがホストになろうって店に勤めて、まだ駆け出しだったころの話なんすけど、給料も低いし、一人で暮すなんて金もねえから、同世代の男らと共同で部屋を借りて生活してたんです、楽しかったっすよ、毎日が修学旅行みたいで。
そいつらの中で、地元でも超モテ男のイケメンで通ってて、上京してもっと上り詰めてやろうって思っている、野心が強い同期がいて、すげーギラギラしてたなあ。
で、銃兎の話で思い出したんだけど……。
そいつのスーツ、胸ポケットからいつも、ごっそりと髪の毛が出てくるんすよ。
ほとんどが黒い髪で、なんか毛根ついてて、あんまし手入れしてねえような、かさかさした感じだったんすよ、まあ、触っちゃいないけど。
おい、やべえんじゃねえの?って、仲間が、俺も含めてですが言ったんすよ。
「ああ、しょうがないっしょ。まだつきまとってる女がいるんだよ。しつこくてさ、とっくに骨になったくせに、まだやってくるんだよねえ」
って、まあうざそうに、言いやがるから、ひいたなあ。
そいつ、店で出世できないまんま、辞めるっつって、地元に帰っちまったんす。
見送るとき、そっと背中に手を添えた女がいたんすよ。
他の奴らは、いなかったって、言ってたんすよねえ……・
俺しか見えてねえっていう、やつなんすかね?
まあ、こんな感じで終わりっす。