じゃあ、ラストは僕がお話しします。
二郎が言った通り、大鍋には食い散らかした鶏の生首と足が入っていました。
中野さんはにたにたして「今日は上機嫌なようですね、ほら、こんなに召し上がっている。いつもは一口ぐらいなのに、皆さんよかったですねえ」なんて、薄暗いなかで言うもんだから、思わず「てんじょうさまって、なんなんだよ・・・・・・」と、つぶやいてしまいました。
大鍋が、がらんがらんとに2,3度床の上えぐるぐる回転しはじめました。
それを見て僕たちは「うわああ!」って叫んで、兄弟で身を寄せ合いました。
「くそ餓鬼が、失礼な口をきくと、罰があたるぞ」
中野さんが、低い声で言いました。
薄暗さと逆行で表情はよく分からなかったのですが、攻撃的な口調になったので、睨んでいるように見えました。
「てんじょうさまはなあ、私がやっと見つけた、美しい姫様なんだ。空腹で倒れているところを、私が連れて帰り育ててやったのさ。家を守ってやる、腹を満たせば願いを叶えてやると、約束してくれたんだ・・・・・・」
姫様?鶏の生首を食う姫様なんかいるかよと思っただけだったんですが、すいません慇懃無礼な性格がわざわいして、声に出してしまったようです。
いち兄に「三郎!」と怒鳴られ、中野さんがますます苛立っている空気をまとっていたので、やばいと感じました。
「お前らもわかんないのか、てんじょうさまは、私を救ってやると約束したんだ。受験に失敗し、就職もできず、家にこもっている私を、慰めてくれたんだ・・・・・・、ちゃらちゃらして、遊びほうけている奴らになにがわかる、私は、私はお前らみたいな奴のせいで、ずっと苦しんできたんだ!」
怒鳴り声をあげた、中野さんの後ろで、なにかがずるりと垂れ下がるのが見えました。
天井から、薄汚れた、おそらく白だったのであろうワンピースを着た、髪の長い女でした。
僕と目が合うと、にたりと嗤い、鍋に入った鶏の生首を口にくわえました。
天井がぐるぐるまわるように、蔵じゅうが共鳴しだしました。
おほほほほほおぉっぉお・・・・・・あはははははっははは・・・・・・。
女が笑い出しました。
鶏の生首を、ごくりと、ひと呑みしてから。
うふふ・・・・・・ふふふふふふふっ・・・・・・・きゃははははははは・・・・・・。
甲高い笑い声が、蔵じゅうに響きました。
中野さんがそれに合わせて、鍋を持ってぐるぐる回りながら、笑いだしました。
帰ろう、といち兄が言いました。
僕も二郎も、中野さんを置き去りにして、いち兄と一緒に、うち蔵から出ました。
ぎいいいいいいいいぃぃぃぃい・・・・・・。
あははははは、きゃははははは・・・・・・。
ひゃひゃひゃひゃひゃ、ひゃひゃひゃ・・・・・・。
ものが飛び交うなか、声が響き合い、耳が痛くなりました。
早く、帰るぞと急かす、いち兄のうしろで、鉄の扉がバタンとしまりました。
男性4人の力でようやく開いたはずの扉が、自然に。
後日、中野さんのご両親から、おそらく何かで調べたのでしょう、いち兄のスマホに連絡がありました。
あの家には、もう関わらない方が良い。お金なら払いますので。
おびえた口調で、中野さんのお母さんが、いち兄に話していました。何もしていないので、お金はいただけませんと伝えました。
僕たちも、二度と関わりたくありません。
すいません、文字数がオーバーしてしまいました。
これで「てんじょうさまの家」は以上です。
中野さんからはそれ以降連絡はなく、僕たち兄弟にもなにも起きていません。
幻太郎<次こそ8巡目です。
一郎<ご、ごーる見えてきた・・・・・・。
三郎<緊張した~。
二郎<思いだして気持ち悪い。
左馬刻<そういう時はセンブリ茶だ、おみまいするぞこの野郎。
三郎<いやああああ~。
左馬刻<おい、センブリ茶のまねえか?二郎もおいで~。
一郎<やめろ!俺がのm・・・・・・無理だこれ!
幻太郎<では8巡目でお会いしましょう!