これは、まだ便利屋をはじめてから間もないころの話だ。
ちょうど二郎、三郎も夏休みに入ったから、じゃあ三人で行くかって、都内の中王区近くにある家をたずねた。事前に「蔵の掃除をしたいから、手伝ってほしい」という依頼があったんだ。
通された家は全体的に薄暗く、外はかんかん照りだったにもかかわらず、涼しいとかを通り過ぎて妙に、うっすらと寒かった。
「なんか、寒くないですか?」と依頼してきた、家の・・・・・・仮に中野さんとしとこうか、中野さんに言ったら「うちは、いつもこんな風なんです」と、静かに答えられた。陰気くさいっつーか、どんよりしたおっさんだった。
「両親も、この家は嫌だと出て行ってしまいまして、私だけがひとりで住んでいるんです。中王区近くで、このように大きな家を持ち続けることなんか、贅沢極まりないのに、あいつらは・・・・・・」
背中を向けながら、おっさんはぶつぶつと両親への不満を述べていた。
通されたのは、家の突き当たりにあるいかにも重そうな、鉄でできた扉の前だった。でかい南京錠がかかっていて、おっさんはがちゃがちゃとでかい音をさせながら、南京錠の鍵穴に五寸釘をさしこんで、器用に開けた。
確か、鍵をなくしたから、こうして開けてるんだって言っていた。
蔵って言えば、母屋と別に作られているって思うだろ?その家は、「うち蔵」ってやつで、家の中に蔵が入っているというやつだった。俺はもちろん、二郎も、三郎も見たことがなくて、「こういうのもあるんだ」って、みんな感心して扉を眺めた。
立っていないで、手伝ってほしいと中野さんに言われて、慌てて手を貸した。
扉は重くて、4人がかりで力を合わせて、ようやくズルズル、ズルズルズルとこすれる音をたてながら開いた。
ぶわっと、カビのような、生乾きのタオルみてえな臭いが鼻を刺激した。
3人ともマスクをして、軍手をはめていたら、中野さんが「ひどい臭いですよねえ、私はなれてしまいましたけどねえ」とにやにやしながら言う。
この蔵にはね、てんじょうさまが、いらっしゃるんですよお。
だからねえ、きれいにしたいんですよ。
中野さんは嬉しそうに、そう言った。俺の分は以上だ。
二郎に続く。