病院で亡くなった患者さんで、たまに、身寄りのない方がいらっしゃいます。
 
近年、そのような患者さんが多くなりまして、私も医師として最期まで責任があるだろうと感じ、無縁仏の碑を作り、そこで皆さんを弔うことにしました。
 
 現在、関東某所にある寺にお願いして作っていただき、毎年盂蘭盆の際には出向きまして、挨拶させていただいております。
 
そちらの奥様が、寺の主人となっておりますが・・・・・・なぜか、男子が長生きしないのだと、おっしゃっていました。奥様にはお兄様も弟もいらしたのですが、お兄様は事故、弟さんは病気で亡くなったそうです。
 
 奥様はいまのご住職、つまり旦那様ですが婿養子という形で来ていただいたとお伺いしました。
 
 そういえば、住職の姿が見えないのですがと訊いたところ、奥様は「突然のことで、ちょっと・・・・・・」と濁されました。詳しくは、教えてくれませんでした。
 
 奥様が、ご自宅で飼っている雌猫はもう20歳、まだ元気に家中を駆け回っているそうです。
奥様自身も数年前、大病を患って私の病院で治療を受けたのですが、一年で回復し今は健康そのものです。
 
 生き物をそっと門前に置いていく人が居ますが、なぜか雌だけ長生きして、雄はすぐに奪われてしまうんですよ。
 
 奥様はそうおっしゃって、にこにことしていました。
 客人までは奪っていかないでしょう、たぶん。
不安になる私を見ながら奥様はそう、付け加えました。
 
 奪う、とはなにを奪うのか・・・・・・想像するのはやめました。
 私の話は、これで終わりです。