都内でも、H歴を迎えてなお残っている武家屋敷じみた家って、結構あるんですよ。
例えば昔、武家屋敷が多かった紀尾井町とか。今は女性しか住んでいませんが、昔は大使館があったり、会社や学校も多く、インテリジェンスな場所だったみたいです。
ある日、その紀尾井町にある武家屋敷に住んでいらっしゃるおばあちゃんから、廃棄してほしいものがあるという連絡を受けました。土日だったので、僕も兄ふたりに付き添って、紀尾井町まで行ったんです。
おばあちゃんが一人で住むには立派すぎるお屋敷で、庭も広くて、玄関なんかうちのリビングなんじゃないかっていうぐらいがらーんとしているような、そんな、本当に昔からある豪邸、お屋敷っていう感じでした。
3人で通されて、「お若いんですから、お茶よりこちらのほうが」って、そこでもコーラをすすめられて、ありがたくいただきました。
ごちそうになったリビングにも大きなテーブルと、それとセットになった猫足っていうんですか?丸くてころんとした足をした、ふかふかの椅子があって、本当にドラマみたいだなって、兄弟でひそひそしていたんです。
お茶請けにと出されたマカロンを頬張っていたら、おばあちゃんが木箱をもってやってきたんです。そうですね、大きさは夢野さんが持っている旧式の電話器型ヒプノシスマイクぐらいで、紫の紐でぐるぐるまきにされていて、お札も貼られていました。
おばあちゃんは、僕たち3人の前にそれを置くと「これを、どんな形でもいいので処分してほしい」と頼んできました。先ほどまで、僕たちに向けていた穏やかな表情とは違い、とても険しい、目がキッと吊り上がって、歯をむき出しにするような顔で。
般若みてえだな、って、二郎がつぶやいたのを僕も同意していました。
お菓子もコーラも、あと「お夕飯に」って、なんだか高そうな仕出し弁当みたいなものまでいただいて、持って帰らないわけにもいかないだろうと思い、僕らは車にそれを積んで、事務所に戻りました。
その木箱を事務所に置いてから、どうもおかしいんです。
先ほど兄弟で話したんですが、分割して話そうと決めました。
なので続きは、二郎にお願いします。
僕の話は、ここまでです。