部屋の中でほのかに、プーアル茶のかおりがする。

房间里,我闻到普洱茶的香味儿。

濃厚で甘い、彼が好きなかおりだった。

又浓又甜,就是他很喜欢的香味儿。

 

干した棗を出そうか。

端干红枣吧,怎嘛样?

カシューナッツが挟まっているやつ。

紅棗夾腰果,就好的。

いいね、そうしようか。

那太好,我也是。

 

昨日まで、交わしていた会話が耳の奥でよみがえる。

在耳朵里边,苏醒我们聊的会话,到昨天结束了。

好きなものとか、行きたい場所とか、もっともっと、話せばよかった。

心上充满了后悔。你要去什么地方,你喜欢吃什么的,我们应该聊天儿多一多。

あなたが好きだったプーアル茶を飲みながら、ふたりで。

一边喝普洱茶,一边我们俩互相。

 

遺された人のことなんか、きっと考えちゃいないわね。

你一定没考虑被遗留的人。

あなたはどうせ仕事が好きで、忙しい自分が好きだったんだから。

你最喜欢做工作,又喜欢忙不过来的日常。

 

悪態をつきながら、プーアル茶の香りを吸い込む。

一边发牢骚,一边问普洱茶的香味儿。

 

ごめん、と彼の声がする。

不好意思。听起来了,他的声音。

 

先週末、通勤途中で倒れた彼は、そのまま旅立った。

上个周末,上班沿途,他昏过之后还没回来。

私が行かれない、追いつけない場所へ。

他出去了,我追不赶的地方。