ロンドンで翻訳・通訳(日本語⇔英語)の勉強をしている時、

その一環としてボイストレーニングの授業がありました。

先生は、CM などにも出演したりするイギリス人の女優さんで、

たぶん発音などのアカデミックな勉強もされたような専門家でもありました。

アメリカ英語やオーストラリア英語などのアクセントも自由に操れるし、
経験も豊富なようで、日本人の英語発音の弱点などもよくわかって指導できる、

非常に優秀な先生でした。

 

ボイストレーニングなので、

本来ならば発音矯正のようなことを中心には行わないのですが、

10人ぐらいいたクラスの内の数人以外は

まず発音指導が必要なレベルでした。

 

 

その日は、Tongue Twister(早口言葉)を使って練習をしていました。

 

「ではこの文章をひとりずつ順番に言ってみてください。」と、

先生は前のホワイトボードに書きました。

 

She is sitting on the sea shore.

 

そうです、[s] と [∫] の発音を間違えずに滑らかに話す練習です。

日本語でもそうですが、似たような発音の音が続くと言い間違いが起きますよね。

アナウンサーのような職業の方々がやるような訓練です。

 

けれどもこのクラスでは、言い間違い以前の、

[s ]と [∫] の発音の違いから指導を必要とする人がほとんどでした。

先生も予想以上に時間と手間がかかってたいへんそうでしたし、

生徒の私たちも自分の番がまわってくるまで

じっと待っていなくてはなりませんでした。

 

そしてやっと、お隣に座った20歳ぐらいの女性の番になりました。

その時まで、前の人たちが読んだのと先生の指導をよく聞いて、

彼女なりに練習していたんだと思います。

かわいらしい声で、ちょっと緊張気味にその文を読みました。

 

けれどもその問題となる [s] と [∫] の発音が根本的にわかってなかったのでしょう。彼女は言いました。

 

She is shitting on the sea shore.

 

すぐ隣で、そんなかわいい感じでそんなことを言われた瞬間、

私の頭の中には、ぱっとそのイメージが浮かび、

悪いとは思いましたがこらえきれずに吹き出してしまいました。

先生はギリギリ笑いを我慢して、

「そうだよね」って顔で私を見ていました。

 

 

She is sitting on the sea shore.

 

の sitting が shitting になるだけで、

こんなに意味が一転するのです。

文中のたったひとつの音 [s] が、[∫] になっただけなのです。

 

「彼女は海岸に座っています。」

って言っているつもりが、

「彼女は海岸でクソしています。」

(こんなニュアンスです)

になっていたら、恐くないですか?