柾鷹が昨日の事を思い出している内に、
校長先生の話はいつのまにか終わっている。
そして柾鷹の手には、すでに卒業証書が持たれていた。
柾鷹(・・・いつのまに・・・)
どうやら無意識の内に、近藤先生に名前を呼ばれ
壇上に上がり、証書を受け取っていた。
柾鷹(・・・3年前の小学校の卒業式は嫌だった記憶があったな・・・)
そんな事も考えている内に卒業式は終わりを迎えようとしている。
学年主任の先生「卒業生、退場。」
その一言で、3年の卒業生は一斉に立ち上がり、
1組からのクラス順に体育館を退場していく・・・。
在校生・保護者・先生などから拍手喝采を浴びながら・・・。
そして教室と教室前廊下・・・。
先生達が戻ってくるまで
3年の各クラスの卒業生達は自然と、しばしの自由時間になっていた。
教室内と廊下・・・、などでそれぞれに会話が交わされている。
廊下でチャマが柾鷹に話しかけてきた。
チャマ「当分、お前ともお別れだな。
高校は全然地域が離れてるしな。」
柾鷹「そうだな。」
チャマ「でもよかったな。お前が行く男子校。
新開の行く女子校と近くてよ。」
柾鷹「それは理由じゃ・・・。」
柾鷹の通う事になる男子校、朋美が通う事になる女子校。
この2つの高校は、
間に最寄りの駅を挟んで300メートルぐらいしか離れていない。
そんな時・・・。
朋美「鷹くん。」
チャマ「おっと、お~い祐平~!」
そのままチャマは教室内にいる祐平の元に向かった。
柾鷹(・・・あいつ・・・)
朋美「・・・今日で卒業だね。」
朋美は少し寂しそうな顔をしている。
柾鷹「そ・・・だね。」
朋美「でも鷹くんとはまた会えるよね。高校が近いしね。」
柾鷹(・・・新開さん・・・知ってたんだ・・・当然か・・・)
その時・・・。
エミリー「タッキ~!」
廊下の奥からエミリーが柾鷹の元にきた。
柾鷹「ん?どした?」
エミリー「よかった・・・。変わりなくて・・・。」
柾鷹「ハ?何が?」
エミリー(・・・あたしの心配し過ぎかな・・・)
柾鷹(・・・もしかして・・・)
柾鷹は急に真剣な表情になる。
エミリー「え?何よ?」
柾鷹「・・・。」
柾鷹は黙ってエミリーを見ている。
エミリー(・・・ま・・・まさか告白でもする気じゃないでしょうね
・・・卒業式だからって浮かれてそんな気分に
・・・モーミいるのよ・・・何であたしに向かって
・・・あたしはタッキーをフォローしなきゃいけない立場なのよ
・・・でも・・・それならそれで・・・)
エミリーは少し横へ視線を逸らした。
柾鷹「エミリー・・・。」
エミリー「な、何よ・・・。」
柾鷹「お前・・・。出席日数足りなくて、もう1回さ~、中3やり直すとか
言うんじゃ・・・。だからそんな慌てて・・・。」
エミリー(・・・え・・・)
エミリーは視線を柾鷹に戻す。
エミリー「バ、バカじゃないの!あたしだって卒業ぐらいできるわよ!
それに高校だってモーミと同じ女子校なんだからね!」
エミリーは顔を真っ赤にして言い放った。
朋美「だよね。よろしくね、エミリー。」
朋美は冷静に答えた。
エミリー「うん。」
柾鷹(・・・何でそんなムキに・・・)
エミリー「バカタッキー!」
そう言うとエミリーは自分の教室に戻って行った。
柾鷹(・・・何なんだ・・・相変わらずあいつは
・・・そう言やエミリーとあんな感じで喋れる様になったのも
・・・あの事件以来だよな
・・・きっかけは1年の時の哲だけど
・・・あいつ・・・今頃ドコにいるんだろ
・・・元気かな・・・)
朋美「鷹くん。」
柾鷹「え?あ、何?」
朋美「鷹くんもこれからよろしくね。」
柾鷹「う、うん。」
そう言って朋美は教室に入って行った。
柾鷹(・・・新開さん
・・・そう言えば赤井との事を最近聞かなくなったな
・・・まだ付き合ってるらしいけど・・・)
柾鷹は1人考え込んでいる。
その間、教室前廊下は卒業生達の話し声が飛び交っていた。
そこに・・・。
佐々木先生「・・・みんな、そろそろ近藤先生・・・戻ってくるわよ・・・。」
副担任の佐々木先生がやってきた。
佐々木先生の声は大きくないが、
不思議と卒業生達の耳に入ってくる。
それを聞き、次々と卒業生達は教室に入っていく。
佐々木先生「・・・ほら、滝雄くんも・・・。」
柾鷹「あ、はい・・・。」
そして柾鷹も佐々木先生に導かれる様に教室に入っていく・・・。