将来的にみれば日本語教師の需要は高いと言えます。
近年日本語を学ぶ外国人が増加し、その目的は就職や留学にとどまらず多様化しています。
https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00014.html
現在の日本は高齢化という理由から、将来労働不足が起こることが予想されるでしょう。
そのため国も留学生や外国人労働者への期待が大きく、受け入れに積極的です。
また科学技術の進歩により、今後多くの作業が自動化され、職業の在り方は現状と変わっていくでしょう。
そんな中、人が介在しないと成り立たない仕事は、今後も自動化に置き換わることは少ないでしょう。
日本語教師という職業は「人」がいないと成り立ちません。
単純作業でない仕事ほど自動化に置き換えるのは難しく、将来性がある仕事と言えます。
このような理由から日本語教師の需要は高まり、将来性はあると言えるでしょう。
日本語教師という職業における現状と将来性についてご紹介いたします。
日本語教師の現状
人手不足
国内のみならず世界中で日本語を学ぶ人は増えており、今や日本語教師は人手不足な状態と言えます。
https://senrisblog.com/japaneseteacher-future/
今後の大きな課題の一つとされているのが、日本語教師として働く人の多くがボランティアだという現状。
その他収入を得ている人は非常勤講師、専任講師、主任講師とポジションは様々ですが、非常勤講師として働く人が圧倒的に多いです。
非常勤講師はほとんどの場合、保険や各種手当が整っておらず、給与面もコマ数での計算となり、安定した収入が望めません。
また非常勤講師に限らず、日本語教師の仕事は授業の準備にかかる時間が多く、給与と割が合わないという理由で辞めてしまう人が少なくないようです。
日本語教師という職業が、労働条件が悪い→離職率が高い→人手不足、という見解で魅力がないと判断される原因の一つであります。
飽和状態の環境
日本語教師として働く環境は様々で、日本語学校、インターナショナルスクール、外資系企業主催のスクールなど、その環境によって働き方や待遇は異なります。
その他専門性が必要とされる大学での日本語教師や企業研修講師、研究機関は、雇用条件の良さや収入が安定しているという理由で離職率が低いです。
また採用の条件として大学卒業以上であることなどが提示されることが多く、学歴や経験が必要となるため初心者の採用は少なくなるといえるでしょう。
このような環境においては日本語教師は足りている飽和状態であると言えます。
日本語教育の法律が誕生
これまでの日本語教育は、地方自治体や受け入れ先の学校・企業が担ってきました。
しかし2019年6月「日本語教育推進法」が成立し、国が施策として総合的に推進し、地方公共団体や事業主にも推進や機会提供などの責務を定めました。
2020年6月には「基本方針」が閣議決定し、以下の通り日本語教育の機会の拡充を定めています。
①外国人等の幼児・児童・生徒
②外国人留学生
③外国人労働者
④難民
⑤地域で暮らす外国人(永住者、日本人や永住者の配偶者など、定住者、家族滞在)
⑥国民の理解と関心の増進
それぞれについて具体的な施策が明記されています。
この法律は日本における日本語教育の意義を支える存在であるだけでなく、日本語教育を推進する責務を負う者として、国、自治体、事業主の3者を明確にしている点でも極めて重要と言えます。
また「関係省庁・関係機関間の提携」の必要性が明記されており、日本語教育はこれを管轄する文化庁とその関係者だけですすめられるものではありません。
日本語教育はもはや学問や研究ととらえることができ、それを支える日本語教師に今後一層の期待が高まります。
日本語教師の資格
現在、日本語教師には公的な資格はありませんが、民間の日本語学校のほとんどは、採用の際以下の3つの条件を提示しています。
①文化庁が定めた内容を含む420単位時間の日本語教師養成講座を修了している。
②日本語教育能力検定試験に合格している。
③大学・大学院の日本語教育専攻(主専攻で45単位以上、副専攻で25単位以上)を履修・修了している。
そんな中、今後日本語教師の人手不足や給与の不安定を改善し、教師の質と地位の向上のため、日本語教師国家資格化する政府方針が固まりました。
https://www.sanko-nihongo.com/column/post-corona/
まだ確定したわけではありませんが、日本語教師としての職業の将来において大きな影響があることは間違いありません。
日本語教師にも専門性が必要とされる
国内の日本語教育の拡充という目的で様々な施策が進み、専門性をもった日本語教師の活躍が期待されています。
https://shingakunet.com/bunnya/w0006/x0092/tenbou/
2019年3月に公表された「日本語教師の養成・研修の在り方について 改訂版」では、日本語教育人材の役割を以下の3つに整理しています。
①「日本語教師」
日本語学習者に直接日本語を指導する者
②「日本語教育コーディネーター」
日本語教育の現場で日本語教育プログラムの策定・教室運営・改善の指導・助言を行うほか、多様な機関との連携・協力を担う者
③「日本語学習支援者」
日本語教師や日本語教育コーディネーターと共に学習者の日本語学習を支援し、促進する者
この中でも①「日本語教師」においてはキャリアによって以下のように段階を定義しています。
養成(養成講座などで勉強中の者)
初任(講座修了後、日本語教育歴3年程度までの人者)
中堅(2400単位時間以上の指導経験、3~5年程度の教育歴のある者)
日本語教育推進法はまだ誕生したばかりで、予算がついて活動が本格化するのはこれからですが、今後、日本語教育の現場が格段に広がっていくことが期待できます。
将来日本語教師を目指すのであれば、どんな環境で誰に対してどのような日本語教育に携わりたいのか、という方向性を早めに設定することをおすすめします。
https://www.brush-up.jp/guide/sc8/demand
その方向性を視野に入れ、日本語教師としての基本的な素養に加えて、その分野に必要な専門性をつけていくことで、自分が活躍できる環境へ着実に進めるようになるでしょう。
ステップアップすることで年収アップを目指す
現状様々な課題はありますが、日本語教師という職業は有利な売り手市場であると言えます。
非常勤講師で働くことは収入面で安定が見込めないという点がありますが、将来的に考えて日本語教師としての実績を積むためのファーストステップであるとも解釈できます。
その後非常勤講師から専任講師へ、また専任講師を3年以上経験し主任講師へ、というステップアップを踏むことにより年収アップを目指すことができるでしょう。
また日本でこのステップを踏んでいるということは、将来働く環境の一つに海外という選択肢が増えるということにもつながります。
日本語教師として働く上でどのような展望を持ってステップアップを目指すかということで、将来性を自ら高くすることができるでしょう。
まとめ
日本語学習者の目的の多様化、また日本語教育の法律が創設され、国家資格化されることが見込まれるということで、今後日本語教師の需要は増えるでしょう。
これからの日本語教師は専門性をもち、能力を磨いて社会的役割を担うことが求められます。
またどのような場所でどのような相手に日本語を教えたいかという方向性を定め、そこで活かせる能力を身につけるということで、日本語教師としての自分の活躍の場を広げることができます。
現状、労働条件や待遇面、働く環境などにおいて様々な課題はありますが、自分の働き方や備える能力次第でステップアップを見込めるという魅力もあり、それが将来性につながると言えます。
チャレンジしてみようと思われる方はぜひ参考にしてみてください。