第1 学童保育で働く人の資格はできたばかり
以前に書いたブログ、放課後のおうちを作って-新制度下での学童保育-でも書いたように、もともと、学童保育(児童福祉法上の正式な名称は放課後児童健全育成事業ですが、ここでは「学童保育」といいます。)自体が、法制化の施行が平成10年度、児童1人当たりの専用区画の面積基準等の学童保育の設備及び運営に関する厚労省の基準(平成26 年厚生労働省令第63 号/以下「設備及び運営に関する基準」といいます。)が施行されたのは平成27年度からと、法制化されてからの歴史が浅い制度です。
学童保育で子どもたちを支援する放課後児童支援員(指導員)についての資格要件も、設備及び運営に関する基準の一内容として平成27年度から施行されました。
学童保育自体が法制化されてからも、新制度以前は、指導員については、その専門性を証明する公的な資格要件がない状況が続いていました。
そのため、学童保育で働く指導員には、保育士、幼稚園教諭、教員免許、社会福祉士といった資格を持っている方もいれば、そのような子どもや福祉に関する資格を有していない人もいます。
第2 放課後児童支援員 ってどんな資格?
そのような状況下でできた指導員の資格「放課後児童支援員」はどのような資格なのでしょうか?
指導員(放課後児童支援員)の資格要件は、設備及び運営に関する基準の10条3項第1号から第9号にさだめられています。(※1)
ざっくり説明すると
(1)保育士、幼稚園教諭、教員免許、社会福祉士といった基礎資格 を持っている方
(2)大学や大学院で社会福祉学、心理学、教育学、社会学、芸術学若しくは体育学の課程を修めて卒業した方
(3)高等学校卒業者等で
2年以上児童福祉事業に従事した方
2年以上放課後児童健全育成事業に類似する事業に従事した方で、市町村長が適当と認めた方
おおむね上記の(1)、(2)、(3)のような要件に当てはまる方が、都道府県が実施する[放課後児童支援員認定資格研修]という研修を受講すると、放課後児童支援員になることができます(この放課後児童支援員認定資格研修も2015年度から始まりました。)。
第3 指導員(放課後児童支援員)の配置のこと
1 新制度の配置基準
新制度になって、学童保育ごとに、開所時間を通じて必ず一人は放課後児童支援員の有資格者を設置しなければならなくなりました(※平成32年3月31日までは経過措置があり、資格取得予定の者の配置でOK。なお、職員配置としては開所時間を通じて必ず2人の職員を配置することが必要ですが、1人、放課後児童支援員の有資格者の職員がいれば、もう1人の職員は資格のない補助員でもいいことになっています。)。
学童は、[放課後のおうち]の宿命として、通常時の平日と土曜日や長期休み期間とで開所時間がかなり違います。
長期休みには、開所時間はかなり長時間になります(学童にもよりますが、午前7時台から午後7時台までの開所時間になることも多い)。
年間を通しての勤務時間が変則的な中、長期休みや土曜日の朝早い時間帯も含めて、[開所時間を通じて必ず1人]は放課後児童支援員を配置しなければならないとなると、当然、複数の放課後児童支援員を雇用していなければ、配置基準を満たすことができません。
2 放課後児童支援員の認定資格研修
放課後児童支援員の認定資格研修は、まだ平成27年度からはじまったばかりですので、まだ認定資格研修を受けていない指導員の方も多くいます。
各学童は、平成32年3月末日までに、現在、学童で働いている指導員に、順次、[放課後児童支援員]の研修を受講してもらい、経過措置が切れるまでに、[開所時間を通じて常時1人は放課後児童支援員がいる]状況を確保できるようにしなければならなくなりました(これが親運営の学童では特に、、なかなか大変なのです(;^_^A。アルバイトの方の募集、面接、採用も親が行いますので。)。
第4 放課後児童支援員認定資格研修って、どんな研修?
1 実施主体
放課後児童支援員認定資格研修は、都道府県が実施します。
ただし、学童保育の制度そのものが、法制化の以前から親主導、民主導で発展して来た歴史的な経緯もあり、都道府県が直営で研修を実施する例はごく少なく(平成27年度では都道府県の直接実施は、2.1%)、学童関係者が設立したNPO法人(日本放課後児童指導員協会や学童保育指導員協会)や一般社団法人、株式会社や大学等に委託されての実施が多くなっています。
2 研修の時間・内容
(1) 研修の時間
1科目90分×16科目、合計24時間の研修を受講します。
(2)研修の内容
放課後児童支援員認定資格研修で実施される研修の内容は以下の通りです。
放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の理解に3科目
1 放課後事前育成事業の目的及び制度内容
2 放課後児童健全育成事業の一般原則と権利擁護
3 子ども家庭福祉施策と放課後児童クラブ
子どもを理解するための基礎知識に4科目
4 子どもの発達理解
5 児童期(6歳〜12歳)の生活と発達
6 障害のある子どもの理解
7 特に配慮を必要とする子どもの理解
放課後児童クラブにおける子どもの育成支援に3科目
8 放課後児童クラブに通う子どもの育成支援
9 子どもの遊びの理解と支援
10 障害のある子どもの育成支援
放課後児童クラブにおける保護者・学校・地域との連携・協力に2科目
11 保護者との連携・協力と相談支援
12 学校・地域との連携
放課後児童クラブにおける安全・安心への対応に2科目
13 子どもの生活面における対応
14 安全対策・緊急時対応
放課後児童支援員として求められる役割・機能に2科目
15 放課後児童支援員の仕事内容
16 放課後児童クラブの運営管理と運営主体の法令の遵守
3 履修等について
(1)研修の規模
1度に100名程度までの研修が想定されています。
(2)基礎資格のある方の科目の一部免除
既に保育士等の基礎資格を取得されている方については科目の一部免除はあります。
(3)研修の受講に合否はある?
研修受講後、受講者がレポートやチェックシートを提出することは予定されていますが、レポートやチェックシート自体に理解度の評価(判定)を行って、科目履修の可否を決定するところまでは想定されていません。
第5 [放課後児童支援員]の資格について思うこと
学童保育が、長年、障がい児を含めた子ども達の保育を行って来たのに、そこで働く職員の資格について法的な規制がなにもなかったことからすれば、資格の制定は大きな一歩だと思う反面。
現状、やむを得ない事情は多々あるとはいえ、放課後児童支援員の資格は、資格としてその位置づけがまだまだ中途半端で、現状をふまえた応急処置的な面は否めない、と思います([放課後児童支援員]としての専門性の確保は合計24時間の研修の受講とレポート等の提出のみでは困難なこと、もともとが24時間の研修しかないのに、基礎資格がある人と、2年以上の実務経験のみの人が一部科目免除の差しかなく、研修のみで児童福祉に対する専門性を確保するには無理があると思われること等)。
保育士同様、指導員も人手不足に陥りがちな中、現に働いている指導員達に、現場の学童での保育は回しながら研修は受けてもらわなければならないので、現状では、やむを得ない面は本当に多々あるのですが。
将来的には、福祉系の大学等で、放課後児童支援員の資格取得に対応することがより一般化し、学童保育が[普通の安定した就職先]になってほしいと思います。
放課後児童支援員の資格への対応は、現在はまだ、一部の大学のみでの動きです。指導員の処遇の関係上、学生に安定した就職先として紹介しづらいためだと思われます。
新制度になってから、処遇改善事業で一定の改善はされましたが、まだまだ改善の途上。
現在の放課後児童支援員研修の拡充や、資格要件の見直しは、待遇問題と表裏の関係にあると考えます。どんなに大切でやりがいがある仕事のための資格でも、[取るのは難しいが安定した職に就けない]資格を取ろうとする人は増えないでしょうから。
待遇問題も書きたかったのですが、、つい長くなってしまいました、、orz。
待遇問題については、また改めて書いてみたいと思います。
※1
放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準の一 部を改正する省令が平成30年4月1日より施行されています。現在では、1号から9号に加え、10号として、
十 五年以上放課後児童健全育成事業に従事した者であって、市町村長が適当と認めたもの
が加えられています。この改正により、学歴も問わず、(市町村長が適当と認めれば)5年の経験で放課後児童支援員認定資格研修が受けられることになりました。
また、上記の「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準の一 部を改正する省令」では、設備及び運営に関する基準の第 10 条第3項第4号について、「学校教育法の規定により・・・教諭となる資格を有する 者」を「教育職員免許法第4条に規定する免許状を有する者」とする一部改正も行われています。4号についての一部改正は、、学校の教諭となる資格を有する者を放課後児童支援員の基礎資格として規定しているところ、教員免許状の更新を受けていない場合の取扱いを明確にし、有効な教員免許状を取得した者を対象とするため(=更新を受けていなくても研修の受講対象となることを明確化するため。この改正の趣旨は、「、教員免許を取得したことのある者であれば、その後に教員免許の更新講習を受講・修了していなくても、あるいは、免許状の有効期間を経過している場合であっても、放課後児童支援員の基礎資格を有するものであることを明らかにする趣旨」)です。(2018.10.22に※1追記 2018.11.19 ※1編集)。
以前に書いたブログ、放課後のおうちを作って-新制度下での学童保育-でも書いたように、もともと、学童保育(児童福祉法上の正式な名称は放課後児童健全育成事業ですが、ここでは「学童保育」といいます。)自体が、法制化の施行が平成10年度、児童1人当たりの専用区画の面積基準等の学童保育の設備及び運営に関する厚労省の基準(平成26 年厚生労働省令第63 号/以下「設備及び運営に関する基準」といいます。)が施行されたのは平成27年度からと、法制化されてからの歴史が浅い制度です。
学童保育で子どもたちを支援する放課後児童支援員(指導員)についての資格要件も、設備及び運営に関する基準の一内容として平成27年度から施行されました。
学童保育自体が法制化されてからも、新制度以前は、指導員については、その専門性を証明する公的な資格要件がない状況が続いていました。
そのため、学童保育で働く指導員には、保育士、幼稚園教諭、教員免許、社会福祉士といった資格を持っている方もいれば、そのような子どもや福祉に関する資格を有していない人もいます。
第2 放課後児童支援員 ってどんな資格?
そのような状況下でできた指導員の資格「放課後児童支援員」はどのような資格なのでしょうか?
指導員(放課後児童支援員)の資格要件は、設備及び運営に関する基準の10条3項第1号から第9号にさだめられています。(※1)
ざっくり説明すると
(1)保育士、幼稚園教諭、教員免許、社会福祉士といった基礎資格 を持っている方
(2)大学や大学院で社会福祉学、心理学、教育学、社会学、芸術学若しくは体育学の課程を修めて卒業した方
(3)高等学校卒業者等で
2年以上児童福祉事業に従事した方
2年以上放課後児童健全育成事業に類似する事業に従事した方で、市町村長が適当と認めた方
おおむね上記の(1)、(2)、(3)のような要件に当てはまる方が、都道府県が実施する[放課後児童支援員認定資格研修]という研修を受講すると、放課後児童支援員になることができます(この放課後児童支援員認定資格研修も2015年度から始まりました。)。
第3 指導員(放課後児童支援員)の配置のこと
1 新制度の配置基準
新制度になって、学童保育ごとに、開所時間を通じて必ず一人は放課後児童支援員の有資格者を設置しなければならなくなりました(※平成32年3月31日までは経過措置があり、資格取得予定の者の配置でOK。なお、職員配置としては開所時間を通じて必ず2人の職員を配置することが必要ですが、1人、放課後児童支援員の有資格者の職員がいれば、もう1人の職員は資格のない補助員でもいいことになっています。)。
学童は、[放課後のおうち]の宿命として、通常時の平日と土曜日や長期休み期間とで開所時間がかなり違います。
長期休みには、開所時間はかなり長時間になります(学童にもよりますが、午前7時台から午後7時台までの開所時間になることも多い)。
年間を通しての勤務時間が変則的な中、長期休みや土曜日の朝早い時間帯も含めて、[開所時間を通じて必ず1人]は放課後児童支援員を配置しなければならないとなると、当然、複数の放課後児童支援員を雇用していなければ、配置基準を満たすことができません。
2 放課後児童支援員の認定資格研修
放課後児童支援員の認定資格研修は、まだ平成27年度からはじまったばかりですので、まだ認定資格研修を受けていない指導員の方も多くいます。
各学童は、平成32年3月末日までに、現在、学童で働いている指導員に、順次、[放課後児童支援員]の研修を受講してもらい、経過措置が切れるまでに、[開所時間を通じて常時1人は放課後児童支援員がいる]状況を確保できるようにしなければならなくなりました(これが親運営の学童では特に、、なかなか大変なのです(;^_^A。アルバイトの方の募集、面接、採用も親が行いますので。)。
第4 放課後児童支援員認定資格研修って、どんな研修?
1 実施主体
放課後児童支援員認定資格研修は、都道府県が実施します。
ただし、学童保育の制度そのものが、法制化の以前から親主導、民主導で発展して来た歴史的な経緯もあり、都道府県が直営で研修を実施する例はごく少なく(平成27年度では都道府県の直接実施は、2.1%)、学童関係者が設立したNPO法人(日本放課後児童指導員協会や学童保育指導員協会)や一般社団法人、株式会社や大学等に委託されての実施が多くなっています。
2 研修の時間・内容
(1) 研修の時間
1科目90分×16科目、合計24時間の研修を受講します。
(2)研修の内容
放課後児童支援員認定資格研修で実施される研修の内容は以下の通りです。
放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の理解に3科目
1 放課後事前育成事業の目的及び制度内容
2 放課後児童健全育成事業の一般原則と権利擁護
3 子ども家庭福祉施策と放課後児童クラブ
子どもを理解するための基礎知識に4科目
4 子どもの発達理解
5 児童期(6歳〜12歳)の生活と発達
6 障害のある子どもの理解
7 特に配慮を必要とする子どもの理解
放課後児童クラブにおける子どもの育成支援に3科目
8 放課後児童クラブに通う子どもの育成支援
9 子どもの遊びの理解と支援
10 障害のある子どもの育成支援
放課後児童クラブにおける保護者・学校・地域との連携・協力に2科目
11 保護者との連携・協力と相談支援
12 学校・地域との連携
放課後児童クラブにおける安全・安心への対応に2科目
13 子どもの生活面における対応
14 安全対策・緊急時対応
放課後児童支援員として求められる役割・機能に2科目
15 放課後児童支援員の仕事内容
16 放課後児童クラブの運営管理と運営主体の法令の遵守
3 履修等について
(1)研修の規模
1度に100名程度までの研修が想定されています。
(2)基礎資格のある方の科目の一部免除
既に保育士等の基礎資格を取得されている方については科目の一部免除はあります。
(3)研修の受講に合否はある?
研修受講後、受講者がレポートやチェックシートを提出することは予定されていますが、レポートやチェックシート自体に理解度の評価(判定)を行って、科目履修の可否を決定するところまでは想定されていません。
第5 [放課後児童支援員]の資格について思うこと
学童保育が、長年、障がい児を含めた子ども達の保育を行って来たのに、そこで働く職員の資格について法的な規制がなにもなかったことからすれば、資格の制定は大きな一歩だと思う反面。
現状、やむを得ない事情は多々あるとはいえ、放課後児童支援員の資格は、資格としてその位置づけがまだまだ中途半端で、現状をふまえた応急処置的な面は否めない、と思います([放課後児童支援員]としての専門性の確保は合計24時間の研修の受講とレポート等の提出のみでは困難なこと、もともとが24時間の研修しかないのに、基礎資格がある人と、2年以上の実務経験のみの人が一部科目免除の差しかなく、研修のみで児童福祉に対する専門性を確保するには無理があると思われること等)。
保育士同様、指導員も人手不足に陥りがちな中、現に働いている指導員達に、現場の学童での保育は回しながら研修は受けてもらわなければならないので、現状では、やむを得ない面は本当に多々あるのですが。
将来的には、福祉系の大学等で、放課後児童支援員の資格取得に対応することがより一般化し、学童保育が[普通の安定した就職先]になってほしいと思います。
放課後児童支援員の資格への対応は、現在はまだ、一部の大学のみでの動きです。指導員の処遇の関係上、学生に安定した就職先として紹介しづらいためだと思われます。
新制度になってから、処遇改善事業で一定の改善はされましたが、まだまだ改善の途上。
現在の放課後児童支援員研修の拡充や、資格要件の見直しは、待遇問題と表裏の関係にあると考えます。どんなに大切でやりがいがある仕事のための資格でも、[取るのは難しいが安定した職に就けない]資格を取ろうとする人は増えないでしょうから。
待遇問題も書きたかったのですが、、つい長くなってしまいました、、orz。
待遇問題については、また改めて書いてみたいと思います。
※1
放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準の一 部を改正する省令が平成30年4月1日より施行されています。現在では、1号から9号に加え、10号として、
十 五年以上放課後児童健全育成事業に従事した者であって、市町村長が適当と認めたもの
が加えられています。この改正により、学歴も問わず、(市町村長が適当と認めれば)5年の経験で放課後児童支援員認定資格研修が受けられることになりました。
また、上記の「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準の一 部を改正する省令」では、設備及び運営に関する基準の第 10 条第3項第4号について、「学校教育法の規定により・・・教諭となる資格を有する 者」を「教育職員免許法第4条に規定する免許状を有する者」とする一部改正も行われています。4号についての一部改正は、、学校の教諭となる資格を有する者を放課後児童支援員の基礎資格として規定しているところ、教員免許状の更新を受けていない場合の取扱いを明確にし、有効な教員免許状を取得した者を対象とするため(=更新を受けていなくても研修の受講対象となることを明確化するため。この改正の趣旨は、「、教員免許を取得したことのある者であれば、その後に教員免許の更新講習を受講・修了していなくても、あるいは、免許状の有効期間を経過している場合であっても、放課後児童支援員の基礎資格を有するものであることを明らかにする趣旨」)です。(2018.10.22に※1追記 2018.11.19 ※1編集)。