家と家の塀の間に野良猫が子猫を産んでいた。
我が家側ではなくお隣の敷地内だったので入る事が出来ず、しかも凄く狭い所に。
母猫がおっぱいを飲ませていたこともあり、そっとしておいた。
しかし最近になって泣き方が激しくなったので、そうっと覗いてみたら母猫も兄弟猫の姿は見えず、一匹だけ黒猫が残されていた。
私は猫を飼った事が無く、この子がどういう状態なのか全くわからない。
しばらく観察していると、みゃあみゃあ言いながら塀を上がろうとするではないか。
とんでもなく愛おしい。
どうにかせねばと思い、ネットで検索し、猫好きに意見を求めたりした。
そうこうしていたら、どうやら母猫がおっぱいをあげに通っているらしい事がわかった。
人間が介入する事で母猫が来なくなったら困ると思い、またそっも見守ろうと思ったが、もうその頃から常に頭の中に子猫の存在が…。
気持ち的には保護して飼ってあげたい。
しかし、家族に猫アレルギーがいる為、飼ってから問題が起きても猫に申し訳ない。
猫を飼う決断をしてから手放すわけにはいかない。
だけど、ネットの検索履歴は猫との暮らし、子猫のお世話に関する記事で埋まっていった。
そして昨日の朝。
いつものように子猫を見に行った時、1組の親子に会った。
思い切って話かけてみた所、とんとん拍子で話は進み、なんとその親子に飼って頂ける事になった。
夕方迎えに来てくれるという事で、早速お隣に話をつけにいき、午後仕事から帰って来てから子猫を保護する事になった。
狭い塀と家の間でちょろちょろと動き回っていた子猫。
お隣に許可を取り迎えに行くと始めこそ物音にビクッとしたが、なんなく抱っこして保護する事が出来た。
なんて可愛いんだよ。
それから暫しの間、新しい家族が迎えに来てくれるまでの間、めいいっぱいその可愛さを堪能させて貰った。
新しいご家族の皆さんは相当な猫好きで今も三匹の猫ちゃんと暮らしている方で、子猫のミルクもお家にあるという事で、本当に良い家族に巡り会えたと思う。
お別れの時、お互いに何度もありがとうございますと言いあい、心の中で幸せにねと呟いていた。
子猫が去った後、母猫の事を想った。
母猫は子猫が居なくなった事に気付くだろうか。
気付いた時、辛く思ってしまうだろうか。
胸が痛くなったが、しかし同じ母親として、子猫が幸せになってくれる事が何よりの幸せだろうと思った。
子猫に命の営みを教えてもらった、そんな秋。
また一つ人としての重みを知った。