イライラの矛先を探していた。このモヤモヤする胸の中はどうしたらいいのだろうか?

 

つま先に当たる小石にもイライラする、目に映る車の色にもモヤモヤと黒い感情が広がって

 

壊したくなる。

 

(ああああああ~も~!!!!)

 

リュックの肩ひもを両手で握りしめながら歩く、心の中では大声で叫び狂って

 

頭から湯気が出ているような気がする。

 

「なんで、こうなる?」

 

「なんでなんだ?」

 

 

もしも、あの時に戻れたなら何か変わったのだろうか?

いや、きっと変えられなかったかもしれない。

でも、変わっていたかもしれない。

時間は平等に流れる。

でも、私の時間は止まったままだ。





(はじまり)

「もう、いいんじゃない?早く帰ろうよ」

「もう少しだけだよ。この先にあるって聞いたんだ」

(男ってなんで、こうなの?初めてのデートなのに・・・つまらない。帰りたいな)

高校生の初デートが廃墟の家なんて、肝試しをして彼女にいいところを見せたい彼の

稚拙な目論みは初めから分かっていた。彼女は付き合っていたがこの場所の異常な空気に

早く帰りたい衝動を抑えきれなくなっていた。

「ねえ。もう私帰るから」

それまで、彼の腕に絡めていた腕をスッと抜き自分の意思を伝えた。

(こんな所早く出たい。)

「もう少しなのに、いいじゃん。行こうよ」

彼女の払われた腕に気づかない様子で、手に持った携帯電話を彼女に向けた。

突然向けられた携帯電話のライトに目を細め

「帰るから。こっちに向けないでよ、まぶしいでしょ。もう、やだ」

慌てて彼は光を別の方へ向けた。

光のあたった先に人の顔が浮かび上がった。

「きゃー!!!」

彼女が悲鳴を上げながら走り出した。彼もその悲鳴に驚き走り出した。

2人とも振り返らず必死に走った。ようやくと忍び込んだ入り口にたどり着いき

ドアに手をかけた、ガタガタとノブを回す

「はやく!!はやく!!」

彼女は叫びながら彼の背中をゆさぶり、彼は揺さぶられながらもドアを開けようと

必死だった。真っ暗な部屋の中で何故か開かないドア。二人はパニックになりかけた。

彼女が携帯電を取り出しどこかへ電話をかけようとした時、何故ドアが開かないのか

分かった。

ドアの上から下まで無数の南京錠がかけられていたのだ。

(え!何これ?)

疑問はすぐに恐怖に変わった。自分たちが置かれた状況に理解が出来なかったが、

ただ、本能的に迫りくる危機感と恐怖が2人をパニックに落とした。

「やだ!何これ!!」

南京錠に手を触れる、ガチャガチャと鳴らす。そのうち狂ったように南京錠を掴んみ

もしかしたら、外れるかもしれないと彼女は必死に掴み引っ張り続けた。

闇の中から足音が近づいてきた。彼は背後から近づく足音に気が付いた、首筋に

冷や汗がつたう。

「おい!おい!やめろ!!やめろって!」

泣きわめきながら、南京錠をガチャガチャ鳴らす彼女の肩を掴み黙らせようと大きな声で

彼女に話しかける。一瞬、暗闇の中が静かになった。

ブーンと音がした。

彼の目の前で彼女の頭がぐらりと揺れた。

彼女の顔は90度向こう側を向いて後頭部を彼は見つめていた。

「わあああああ」

もう一度ブーンと音がした。

また、彼も彼女と同じ様になりその場に倒れた床には二人から出はじめた血がゆっくり

広がっていく。

暗闇にたたずむ人影はさらに漆黒の闇に消えた。


テレビを消した。

今は午前3時、たまたま目が覚めてテレビを点けたら何かのホラーものがやっていた。

基本僕はあまりホラーは見ない、くだらないし面白いとも思わない。

今テレビで放送していたホラーも最後まで見たいとは思わなかった。

(あー変な時間に目が覚めちゃったな…)

ベットの脇の飲み残したコーラを口にした。気の抜けたコーラは甘ったるくぬるい。

(マズッ)

分かってはいたのだが、飲んで後悔した。

(トイレ行こう)

薄暗い部屋を出てトイレに向かう。用をたし部屋に戻り、またベットに潜り込んだ

布団に包まり何度か寝返りをうつが目が覚めてしまったようだ。

外は既に明るくなり始めている。夏の朝のジメッとした湿度が部屋の中にも入ってくる。

(彼女に会いたいな・・・)

僕は彼女の事を考え出した。緩やかなカールがかかるやわらかな髪、笑うと少しだけ出る

えくぼ。細い指。いろんな姿を思い起こす。

楽しそうに笑う時もどこか遠い所を見つめながら考えている横顔も僕はとても好きだ。