昔、高校生に、「戻りたい年齢まで戻れるとしたら、何歳?」と聞かれ、「え?やだ。戻りたくない。」と答え、ビックリされた記憶がある。

今同じ質問されても同じ答えだな、と、ふと思った。

もし戻りたいと思うとしたら、「あの時、あっちの選択肢を選んでいたらどうなっていただろう?」とか思う時なんだろうなー。などと考えたら、私はそんな岐路に立った事は多分無いのかもしれないと思った。

一本道だ。

勿論、順風満帆という事ではないし、去年の暮れには人生の大きな方向転換があった。

去年の暮れ、起業した。

元々親の会社を名義だけ継いではいたものの、それとは別に自分で会社を作った。
もう長い年月、毎日どこかで演奏するといった仕事をしていたのだが、それを全て辞め、今、毎日昼間普通に事務仕事などをやっている。
コンサートなどは相変わらずやっているが、日常の生活はガラッと変わった。

ほんの数ヶ月前まではこんな生活は想像もしていなかった。
まさか自分が音楽以外の仕事をするなんて!

と、思ったが、更によく考えてみたら私、元々「音楽で生計を立てよう!」と決心した事なんて一度も無かったんだった。

音楽は勿論好きだし、それはこれからも変わらない。
永久に続けていくであろう。

しかし、この世界で仕事をし続けるという事に対して執着は無く、そもそもこの仕事も、人に言われて始めたんだった。

大学生の時、ピアノが弾けるという理由でホテルのラウンジなどのピアノ演奏のバイトを頼まれ、学生だから暇なので、言われたらいつでも飛んで行く、というのを繰り返していたら、気がついたら大きなキャバレーのショーバンドにいて、ポップスから演歌まで色んなジャンルの音楽に携わり、フルバンドから小編成のバンドまで色んなサウンドにも触れ、そのうち教える事も始めたが、実際やってみたら教える事は私には合わないと気づいてそれは辞め、やはり演奏の仕事をしていたら、シャンソンという珍しいジャンルの音楽まで触れる機会があり、とても勉強になるなー、と思っていたら今度はアレンジなどをやりたくなり、するとアレンジの仕事が来るようになり、それを一生懸命やっていたら今度は毎日演奏するという仕事に対するモチベーションの維持が難しくなってきて、「うーん」と思い始めた頃にトラブルに巻き込まれ、どうしてもある事を私がやらなきゃいけないような状況になり、そこで「自分で会社作って全部自分でやろう!」と思い立ち、完全に見切り発車でスタートしたものの、予想外に約三ヶ月で最善の位置まで来てしまった。

これが私の20代から今までの出来事。

しかし不思議な事に、今の会社は音楽とは全く無縁だが、音楽のおかげで繋がった人間関係で割と多くの部分が構成されている。

だから、一本道。

今冷静に考えてみても、何か大きな決断をする時に他の選択肢があった事は無い。

「これしかない。だからやろう!」と腹を決めるだけだ。

とにかく目の前の事を一生懸命やる。

結局、これなのだ。

若くして人生を終わらせなければいけなくなった高校の同級生がずっと言っていた言葉だ。
全力で目の前のやるべき事をやるのが人生なのだ。

これは本当に予想外だったのだが、音楽以外の仕事というのも実に楽しい。
はっきり言ってメチャメチャ楽しい。
毎日ワクワクしている。

全く知らない世界に自分で会社を作って乗り込んだわけなのだが、みんな結構親切に教えてくれるし、社員ではないが、一緒にやってくれる仲間も沢山いる。
非常に良い優秀なチームが出来て、関わる人がみんなワクワクしてるのが伝わってくる。

優秀なチームで仕事をする、というのは、音楽でずっとやってきた事だ。
会社は地味な仕事だが、音楽も普段の個人練習やアレンジやレコーディングは本当に地味だ。
派手なのはステージに上がっている本番の時間だけだ。

と、考えると、結局同じ事をやっているのだ。

だから、やはり一本道なのだ。

分かれ道など、あるように見えて実際は無いのだ。