「なあ。俺ゴムしてたよね?」
しつこく夫に確認されてイライラした。
「俺の子じゃない」とでも言うつもりか。
............................................................
「マー君、財布にゴム入れてるじゃん。あれ擦れて破れる事多いらしいよ」(←本当です)
「俺のせいだって言うのかよ💢お前だって排卵日なのに言わなかったじゃん」
私達は常にオギノ式(死語?)とコンドームと殺精子剤で三重の避妊をしていた。
排卵日は私が断る決まりになっていたのだが…なんか酔った勢いでウッカリしてしまったのだorz 確かに私の責任も大きい。
........................................................
私の妊娠が発覚してから、夫は私を避け始めた。
予定外の未確認生物(自分の子供)を宿した私を見たくなかったのだろう。
友人に話すと彼女は憤慨し
「サイテーじゃん!別れちゃいなよ」
という言葉が返って来たが、別れるも何も 私の身体は今、夫の子供を宿しているのだ。
「妊娠したので離婚します」
とか、聞いたことないしなぁ…
................................................................
「ご迷惑おかけします」
私は職場の人達に引き継ぎをし、ペコペコ謝って会社を辞めた。
残業多めのブラック会社、繁忙期は泊まり込みが当たり前。
それでも就職氷河期に拾ってくれた会社には恩も愛着もあった。
だが、この会社に居続けたら確実に流産する…
当時、中小企業では妊婦に対する配慮などなかった。
秘書課の先輩から
「チーフにして貰ったのに、幕張メッセの直前に辞めますってアナタ神経太いわねえ」
と言われ更に萎縮する。本当に申し訳ない
頂いた花束💐とプレゼント🎁が重かった。
..................................................................
だが、イベントの前だから辞めざるを得なかったのだ。
会社に泊まり込んで、冷たい床に雑魚寝なんかしてたら絶対に流産するもの…
そして
「私はお腹の赤ちゃんを守りたいのだな」
と私はこの時初めて自覚した。
だが、会社を辞めた数日後、私は更にこっぴどい目に遭うのだった。
......................................................................
いつものように産婦人科に行くと、何か異様な空気だった。
「こんにちはー、よろしくお願いします」
といつも通りに挨拶して診察室に入ったが、お医者さんや看護師さん達の表情が固い。
状況を飲み込めないまま、医師と看護師6人にズラリと囲まれてしまった。
一体何事だろう?
いつもニコニコしている初老の医師は、無表情に言った。
「先日受けられた母体血清マーカー検査の結果なんですが」
母体…血清…そういえば何か検査受けたっけ。
なんか染色体異常が分かるとか言ってたような…
「検査の結果、ダウン症児が生まれる確率がかなり高いことが分かりまして」