音楽の趣味と、将来の職業に関する趣味が合う友達から借りたCDがたまらなくいい。
嫉妬さえ覚えるそのセンス。地面のどこにあるかわからない鉱脈を、いとも簡単に掘り当てるような、その動物的嗅覚。
ジャンルでいえばカフェ・ミュージック。日本語で歌うボーカルは、Charaのようなハスキーで甘い声の持ち主。
パソコンからCD-Rに焼いたものが3枚。曲名をえんぴつの字で手書きしてある紙切れにさえ、彼女らしさが光る。そう、彼女はヒカルという名前の女の子だ。
大切な書類を、えんぴつで(しかも角が丸いクレヨンみたいなえんぴつで)書くのは彼女しかいない。そんな女性には会ったことがなかった。
彼女が選んでくれた音楽はまるで彼女自身の体温のように優しくて温かい。温かいカフェオレのような。だから聴きながら少しくすぐったくて恥ずかしい。聴きながら恥ずかしい気持ちになる音楽に、会ったことがあるだろうか。
彼女が選んでくれた音楽を聴きながら、何故か彼女とキスをする光景が浮かぶ。それはいやらしいキスだ。彼女はそういったタイプのキスをするのだと確信する。音楽を聴きながら浮かぶのは何故かそういった類の、ぼんやりとしたエロティックな光景だ。
二枚目のCDと交換したらどんな風景が広がるのか期待しながら、洗濯物を干しに行く。