最近のウォーキングは「できるだけ大股で歩きましょう」です。しかし、大股で歩くことは武道ではありえません。その理由は、筋線維の収縮のし方には、瞬発力のある「速筋」と、持久力のある「遅筋」に分けるという考え方があり、速筋は身体の表面に多く存在し、すばやく収縮することができますが、疲れやすく、筋肉痛の原因にもなりやすい。一方、遅筋は身体の奥に多く、収縮はゆっくりですが、疲れにくい“省エネタイプの筋肉です。「立つ」「歩く」「坐る」といった日常の動作に必要なのは、遅筋を中心とする筋肉です。中高年の場合、速筋ではなく、身体の奥にある遅筋を主に鍛えたほうがいい。ところが大股歩きでは速筋を中心とした筋肉が使われます。速筋は疲れやすく、肉離れを起こしやすい。姿勢も悪い。立ったときに、重心が左右の足の中心に落ちるように、また、横から見ると、耳のうしろ、肩、膝の皿のうしろ、そしてくるぶしが一直線上になることが重要ですが、この姿勢を保つには小股で膝をゆったりと伸ばして歩くことが基本です。歩幅を大きくすると姿勢が崩れ、歩き方もおかしくなってしまいます。姿勢と歩行は表裏一体。正しい姿勢は正しい歩き方の前提条件です。合気道の入り身、転換の動作はおしりの筋肉である大殿筋を意識することがポイントだと私は考えています。タメを作って飛び込む(速筋)よりも小股で近づく遅筋の(拍子)リズムを身につけることをお勧めします。へたな師範演武のほとんどが大股で投げているのは投げようと言う気持ちが大股にしてしまっているからです。合気道の達人は投げていないのです。