剣の達人であった塚原卜伝の言い伝えを紹介します。卜伝には子がなかったので、養子を取ることになり、3人の候補者を決め、養子実験を実施。卜伝は座敷にすわり、入口の鴨居に木枕を置き、ふすまを開けると頭の上に落ちるようにしておき、最初の人を呼び入れた。卜伝が見ていると、彼はふすまを開ける前に木枕を発見し、それを取ってからふすまを開けて入って来た。二番目の候補者は、いきなりふすまを開け、木枕が落ちると後ろへ跳び退って、刀に手をかけて入ってきた。三番目は、ふすまを開けて木枕が落っこちて来るや否や、たちまち刀を抜いて下に落ちない間に真っ二つに切ってしまった。卜伝は、二番、三番の養子候補者が、木枕が落ちてきたから初めて驚いたり、刀を抜いて切りつけたり、小事にこだわってみだりに動くのは修行未熟のためだとどなりつけ、最初の候補者が未然にこれを予知して危険を取り除き、あえて心を動かさなかった態度をほめて、これに家督をゆずった。塚原彦四郎基秀という人です。