軌を味わい真を守る(みちをあじわいまことをまもる)高野佐三郎書


日本の文化は引き算にある。日本庭園はもともと風景明媚な場所を選び、いらない草木を引き抜いてゆくと日本庭園の元ができる。そこから人の手による理想の造園が開始される。名石に銘木、池や川、日本人の慣性に基づいた庭が出来上がる。西洋の庭園は何もない広い空き地に噴水や池、木や植物を植えていく足し算の世界。相反する思考がそこにある。日本は太い木を削り形成する彫刻、西洋は粘土を重ねて塑像を作る。合気道は日本的な引き算の世界、西洋はボクシングのように拳で相手の体にダメージを与える足し算、合気は呼吸法を大切にする。呼吸法とは吸って吐く。相手の攻撃の力を吸収する。つまり引き算。いただいた力を相手に返すだけ。攻撃力は自分に還る。そこには軌道という日本独特の極意がある。