宮本武蔵の二天一流では、構えに関して「有構無構(かまえあってかまえなし)」とする考え方を持っています。本来「構え」というのは、敵がいない平常時において、いついかなる時も咄嗟の敵の襲撃に応じられる身構え心構えを言うのであって、いざ戦闘状態に入ったときにはそこに定まった構えなどなく、ただ「斬る」という目的のために、もっとも振り良い位置に太刀を置くことこそが構えそのものであるという、実に合理的な考え方です。二天一流には、「このように構えなければならない」という「定まった形の構え」というのは存在せず、基本原則という意味において、上中下三つの基本的な構えと左右二つの応用の構え、合わせて五つの構えが「五方の構」として伝わっているそうですが、素手による稽古を前提とする合気道では半身(はんみ)の構え等で稽古をしていますので、植芝開祖の言われる「わしはただ立っていればよいのじゃ」と言う姿勢と宮本武蔵の二天一流の「有構無構(かまえあってかまえなし)」が必ずしも同じでは無いでしょうが身構え心構えについては見習うべきだと思います。