中国拳法と日本武術との比較をしてみると、日本人と中国人との考え方の違いが見えてくる。拳打、蹴り業を極度まで発達させた究極最強まで発達させた中国拳法〔唐手〕と大男を宙に舞わせる激しい投げ技と精妙な関節技を完成させた日本武術。中国拳法は軽く触れたかと見えるのみで相手の内臓に影響を与えたり、または飛び跳ねたり、地にふせたり、酔ったふりをしたり、猿や蛇や鶴、また、スツポンのまねまでして敵を倒す、いわゆる勝つためにはなんでもありなのに対して、日本武術はあくまで姿勢は正しく、触れただけで相手をふっ飛ばし、多数の組んでくる敵を一瞬の気合と動きで倒して敵の体を積み上げ、あるいは指一本で大男を金縛りに押さえてしまう神秘的な業を案出しました。これは、それぞれの国民性、その国に流れている文化、格闘の歴史、芸術観、生活習慣等から生まれてくるものではないでしょうか。日本武術は単なる殺人術に終わらせないで、敵を傷つけずに制する技法を中心に業を組み立てて体系化しています。禅(宇宙との一体化)の影響を受け、精神面においても至上最高の境地にまで至った哲理を構築した日本武術のほうがやはり日本人に向いていると思い
ます。




