幸運を招く白鷹


無明とは、明らかならずという文字が示すとおり、仏法の迷い、無明住地煩悩の迷いのことです。住地とは、住みとどまる地で、滞りとどまる状態をいいます。仏法の修行に五十二位の位階がありますが、その克服せねばならない段階の一つに、何事にも心がとらわれる状態があります。兵法でいえば、相手が切ってくる太刀を見て、直ちに太刀を打ち合おうと思えば、相手の太刀に心をとらわれて自分の思い通りの働きがおろそかになって斬られてしまう。それを心がとどまるというのです。相手が打ってくる太刀は見るけれども、それだけに心をとらわれず、相手の太刀に拍子を合わせて打ち合おうとはさらさら考えず、相手が太刀を振り上ぐるや否や心を少しもとらわれず、すかさず付け入って相手の手元にとりつけば、自分を斬ろうとする相手の刀を取り上げて相手を斬る刀とすることができます。すなわち、無刀の法となります。