母あやめ | 愛犬アミ連載漫画

愛犬アミ連載漫画

前篇『愛犬アミ、世界で一番愛した君へ』
後編『愛犬アミ、生まれ変わりの君に逢いたくて』好評発売中!



 あやめの母親ぶりは期待を上回った。
出産直後からお転婆ぶりは影をひそめ、注意深く愛情深く子育てを始めたのにはびっくりさせられた。
以前からすみれの子を拉致しようとしていたので、子供好きかも知れないとは思っていた。
しかし、動くおもちゃと思っている可能性もあったし、夢中になると転がしたりして乱暴に扱うのではないかと心配していた。

ところがところが、アミの子育てのように子供たちの回りをくるくる回って、そっと抱きかかえたり、首をかしげてじっとのぞきこんでいたり、暇さえあれば世話にいそしんでいた。

 離乳間近になると、歯も生えてきて普通おっぱいを吸われるのを嫌がるようになるのだが、養子先に引き取られる前日まで出ないおっぱいを吸わせてやり、遊んでやっていた。
お腹を見ると何か所か赤く跡がついていて、おっぱいを吸う時歯が当たったに違いないと思うのだが、じっと我慢したのだろうか。

女の子より男の子が二回りも大きいので遊んでいるつもりでもつい乱暴になる。
女の子がお兄ちゃんに噛みつかれて悲鳴を上げると、あやめが何気なく男の子を誘導して遊び相手になり、その間にすみれが女の子の相手をする。
連係プレーが取れている。
おかげで女の子はすみれのあとを、遊んで欲しくて付いて歩くようになった。

新しい家族のもとに行く当日。
 アミの時は、子供たちが生後2ヶ月になると「もう、うんざり」と言う顔をしていたので心配しなかったが、今回は引き取られる直前まで可愛がっているあやめを見て、私は内心ドキドキだった。

 二頭とも行ってしまったあと、見送って戻ってきた私を不思議そうに見上げるあやめ。
探している様子はないのだが、果たしてどうなのだろうか。

 しばらくすると「ひんひん」と鳴いて二階に駆け上がった。
しまった!二階はまだ子供たちのサークルやタオルを片づけていない!
あやめを追って私も駆け上り、わざと明るい声を装って「あやめ、どうしたの?何か探しているの?」
と聞くと、あやめはパッと目を輝かせてボールをくわえて飛びついてきた。
「ん???」
いまいち分からない・・・。
本当に私と遊ぼうと思ってボールを探しに行ったのか、それともチビ達を探しに行って、話しかけられた途端に忘れて遊ぶモードに入ったのか・・・。
なんにしても落ち込まれるよりいい。
このままどうか思い出さないで欲しい、と願ったが案外早く、次の日からは再びどこまでも私のあとを付きまとう甘ったれで子供っぽいあやめに戻った。

良かった。お疲れ様。

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