③お遊戯していますよ。 | あいいろ11番地 aiiroj11~愛と幸せに満ちた「あいいろじかん aiiro-jikan」が流れる街~

あいいろ11番地 aiiroj11~愛と幸せに満ちた「あいいろじかん aiiro-jikan」が流れる街~

とある街の街角。そこには「あいいろじかん aiiro-jikan」という愛に満ちた時間だけが流れているという…。一足先に、ここに気分のお引越しをしてみませんか。街のガイドのあいいろ。がご案しますよ。

 

 

 

社内政治とは。

 

(このブログは基本的に、どこから読んでもいいようになっていますが、念のために、極短あらすじです――明日、会社に行きたくないOL薫子(カオルコ)さん。彼女の潜在意識に、あいいろ11番地の公認ガイド あいいろ。からの声がした。)

 

☆彡

 

薫子さんが叫んだ。

 

「会社で誰もマジメに働いてなくて、むしろマジメにやっているのは、わたしだけ?みんなが、幼稚園の時の『浦島太郎』みたいなお遊戯している?そんなわけないよ!」

 

 

 

「なぜ、かばうんですか?毎週日曜のお昼以降になると、明日行きたくなーい!って叫んでいる会社に対して!」

 

「そりゃ、そうだけど……。あ、そうか!わかったわ!これは、わたしの夢だったんだよね?」

 

 

 

「だから、わたし、自分にとって都合のよい解釈しちゃってるんだ、そうだよね?きっと、あなた――いえ、この声は、あいいろ11番地の公認ガイドのあいいろ。さんなんかじゃない。そんな存在なんていなくて、きっと、自分の声なんだ。自分で自分に言い聞かせているだけなのよ!」

 

「いいえ、この声は、あいいろ。ですよ、あいいろ11番地の公認ガイドにして、あなたに、あいいろ11番地に来ないかと営業している」

 

「だって、そんなわけない。皆、会社で仕事しているよ、朝来たら、メールチェックしているしさ、顧客にも電話しているしさ、経理は受注打ち込んでるしさ――」

 

「まあ、そうでしょうけど――それで、会社の今期の売上はどうなんですか?」

 

「う……」

 

薫子さんは言葉に詰まった。

 

「3年連続下降しているわけでしょ?」

 

「うっ……」

 

「創設者が亡くなり――そのあとを、長男がついで3年目。売上はどうなっています?」

 

「下降です……」

 

「社員は?」

 

「入っては、辞め、入っては辞め――私が入って2年ですけど、わたしがいる間に3人辞めてます、営業2人、内勤で1人。営業マンの分は辞めて新人が入るたびに、わたしが新しい名刺を発注して、元のを処分して――」

 

「何か、改善すべき点とかあるんじゃないかって思いません?」

 

「大ありですけど――」

 

と薫子さんがため息をついた。

 

「でも、社長も役員も改善案をとか、口では言うけど、実際は取り上げる気なんてないんです。自分たちのやりたいようにやって。だから、何も変わらない」

 

 

 

「他の皆さんも薫子さんと同じこと思っているんですよ。だから、社内政治が蔓延しているんです」

 

「社内政治?」

 

と薫子さんが聞いた。

 

「何か、ピンときましたか?」

 

薫子さんが考え込んだ。

 

「――あのね、この前、内勤をまとめている人事部長と個別面談したんだ。わたしが最近、朝、貧血で休みがちだから。体調大丈夫?って。何か、悩んでいることがあると思ったんだね。でも、その時に、ちょっと、正直に、もっと、こうしたいって話をしたの。

 

でも、そうしたらさ、人事部長何て言ったと思う?――

 

『この改善案を通すのは難しいかもしれない、この会社では……。それより、君は、もう少し、社内政治をした方がいいね』だって。

 

最初は何言ってんのか意味わからなかった。そうしたら、それが相手にも伝わったみたいで、

 

『もっと、社長や役員とか、上の人、周りにアピールするんだよ、自分は仕事をこんなに頑張って、一生懸命しています!って』と言うの……!」

 

「まさに、それが、わたしがさっき言っていたことなんですよ。――薫子さん、会社内、毎日毎日、うるさくありませんか?ガーガーと、まるで、アヒル小屋でも突っついたみたいに……」

 

「うん!電話の音とかもそうだけど――あと、皆の声もすごく大きいの。特に、誰かが何かを間違えた時、『あ!これ!○○さん!どうして違うの!』って、やたら大げさに叫ぶの。

 

なんで、あんな大したことないことで、騒ぐんだろう?まるで、誰かが、会社に、とんでもない損害を与えたかのように……。別に大声で言わなくていいことなのに、すごく騒ぐの、すごく変だわ」

 

「違和感を覚えるんですね」

 

「もちろん。だって、どうしてそんなことする必要あるの?」

 

「わざとやっているんですよ」

 

「えッ!?」

 

「もしかして、気づいていなかったんですか?――あー、もう、薫子さん、純粋だから、気づかなかったんですね」

 

「えっ!だって、なんでそんなことしているの?」

 

「さっき、薫子さんが話してくれた、人事部長の言葉、忘れたんですか?」

 

「えぇ?」

 

薫子さんは戸惑った。

 

「――どういう意味?」

 

「つまり、ですね…。他人の些細な間違いを大げさに騒ぎ立てる――そうやって相手を落として自分を持ち上げているんですよ、要するに、さっき、人事部長が言っていた経営者ら、上の人たちへの『アピール』がそれです」

 

「えー!そうだったの!」

 

「気づいていないのは、たぶん、会社で、薫子さんだけですよ。薫子さんより半年先に入った10歳年下の経理の男子も気づいていますよ」

 

「ほんと?」

 

「ええ。薫子さんには、信じられないでしょうけど、それが人事部長の言う『社内政治』の1つです。仕方ないんです。だって、改善案とか出しても、経営者らは取り合わないでしょう?となると、そういう、ちまちましたところでアピる以外に出来ることはないでしょう」

 

「そんなぁ、そんなひどい人たちだと思わなかった……」

 

 

「ひどい人たちってわけじゃないですよ。仕方ないんです。皆さん、ご自身の身を守るのに必死になってしまっているんですね。

 

それに、こういうことって、別に薫子さんのいる会社だけの話でも、中小企業だけの現象ってわけでも、案外ないんですよ。大企業や国営とか、大きな組織の中では、たいてい行われているものなんですよ。

 

日本の会社員は『不労所得』だとか言っている人もいるぐらいですね。

 

薫子さんが今の会社に転職する前の所にもありました。ただ、薫子さんが気づいていなかっただけで」

 

「そうだったのか……。わかりやすくブラックって言うのでなくても、わたしは『社内政治』という霧がかかったような環境で仕事をしていたのね?

 

じゃあ、皆、本当の意味では『仕事』なんてしていないのね。そういうフリをして、『アピール』して、『社内政治』という『お遊戯』を皆でしていると。でも――」

 

とふと、薫子さんは気づいて呟いた。

 

「そんなことで、日本の経済とか社会は大丈夫なの?」

 

「まあ、何とかそれで回っているのが日本ですけど」

 

「あなたは?あいいろ。さん?――あなたがいる、あいいろ11番地は?そこでは、そうじゃないの?」

 

「あいいろ11番地は、違いますよ。わたしも、あいいろ11番地の魅力を伝えたくてガイドをしていますし、お引越しの手伝いもしたいから仕事にしているんです。

 

薫子さん、あなたにも、ぜひ、お引越してほしいですよ。

 

なんせ、お友達の真琴さんも引っ越されるそうですからね」

 

「真琴?真琴って、宮下真琴のこと!?」

 

「ええ、真琴さんは、もう、あいいろ11番地に移住を決めて、借りる家を探しているんですよ」

 

(つづく)

 

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(公認ガイド あいいろ。)