「飛鳥浄御原宮の宮城-飛鳥地域における官衙配置とその構造-」
『明日香村文化財調査研究紀要 第3号』(2002年)
明日香村教育委員会
飛鳥浄御原宮の官衙について検討した論考である。飛鳥宮の官衙については、すでに亀田博氏によって検討されているが、本稿はその後の調査を含めて再検討をした。
飛鳥宮の官衙は宮城内では、内郭の地割りを基に、東方官衙や東北官衙などと官衙区画配置を推定した。さらに宮外にも、宮外東辺官衙や宮外北方官衙なとがある。宮城については、その後の調査で、西北官衙区画としたものが、苑池を囲む区画塀が一部確認されており、調査により、追認されている。しかし、宮外北辺官衙については、北面大垣が推定よりも北に広がることが、明らかになったことにより、存在しないか、あっても極めて小規模なものと考えられ。検討の結果、宮内には内廷に関わる官衙、宮外には外廷に関わる官衙が配置され、各種の倉庫群が宮北方に推定されることは、後の時代の大蔵の配置とも共通する。そして、これらを藤原宮の官衙群と比較することにより、その官衙配置や官衙構造の発展形態を見いだすことができる。
いずれにしても、飛鳥宮の官衙については、本稿執筆以降も、苑池を除いて進んでおらず、藤原宮についても同様である。両者を比較検討できる調査と研究が必要となろう。