斉明天皇が立ち寄った、伊豫の石湯行宮ではないかとされる久米官衙遺跡群の概説書である。
この「遺跡を学ぶ」シリーズもすでに84冊目である。遺跡の概要を理解するのには最適な書物である。似たようなシリーズが某出版社からも刊行されているが、さらっと読めて理解できるのでうれしい。
さて、久米官衙遺跡群は大きく3時期に分かれる。1期は7世紀前半で、初期評衙の政庁。この時期の政治中枢施設の発見はめずらしい。2期になると回廊状に囲まれた区画がある。これが舒明・斉明朝の石湯行宮とされ、飛鳥時代の離宮の実態を考えるのに重要である。あるいは、九州の朝倉宮も類似施設だったのだろうか。この時期、もうひとつ興味深いのは、方格の地割り(街並み)があることである。これは飛鳥の都を理解するにも重要である。3期になると正倉院や来住廃寺が建立される。
いずれにしても、この地域は四国の中でももっとも注目すべき地域であることは間違いない。
橋本雄一 『シリーズ遺跡を学84 斉明天皇の石湯行宮か 久米官衙遺跡群』 新泉社 2012.9刊行
第一章 王家と深くかかわる地
第二章 最古の政庁
第三章 石湯行宮か?回廊状遺構
第四章 広がる官庁街
第五章 寺院の建立
第六章 政庁の出現はいつか
第七章 これからの久米官衙遺跡群