高松塚古墳発掘40周年座談会があった。二部構成で、第一部が出土品の最新研究、第二部が当時の関係者による座談会である。
第一部では、水野氏による刀装具の解説。これまで部品ばかりで見ていたが、大刀のどの部分に、どのように使われていたかをわかりやすく解説された。話を聞いていると、大刀金具だけでは時代を確定するのは難しそうである。このあたり、この春の飛鳥資料館特別展とも関連しており、そちらも楽しみである。一方、岡林氏の棺の話は、これまでどのような研究があり、解体発掘や出土品の再検討により、新たな復元の過程をくわしく話された。なかなか説得力のある話である。特に、おもしろかったのは、盗掘者の目的が金(棺台や日像)であったかもしれないということ。確かに、大刀についても残存部品からは一本しかなかったと思っているが、大刀や鏡を残して、盗掘者は何を持っていったのだろうと、疑問に思っていた。これもひとつの解釈でおもしろい。
座談会は、当時の学生さんたちである。それから40年。ちょうど定年を前後する方々の話である。その中でも印象深かったのは、森岡氏の、「壁画の劣化スピードを抑えるだけでなく、少し綺麗になっている報道を聞くと、科学にも期待をしている」という内容である。確かに、宇宙にも行けるこの時代だが、科学を過信してはいけないという教訓は多くある。しかし、その中でもやはり科学の進歩に期待するところもある。今後の壁画保存についても、希望は持ち続けていきたい。そんなことを考えさせる座談会であった……。