信楽の宮町遺跡で、二つの内裏正殿が見つかったが、残念ながら現地説明会には行けなかった。しかし、当日の資料がHPにアップされており、入手することができた。新聞ではふたつの正殿が、中軸線を対称に整然と対に並んでいるように図示されていたが、実際はそこまで整然とはしていない。ふたつの建物は、同規模で近接しているが、建物の振れが異なり、さらに南北には6m程ずれている。はたして、これで対になった建物と言えるのか?さらに、ふたつの建物は同時期、同時設計なのかと疑問をもってしまう。
確かに宮町遺跡の建物は、方位が一定ではない。おおきく3類の振れをもつ。内裏西正殿と西朝堂、内裏東正殿と東朝堂と前殿、門とその他の建物群、という具合である。このようにみると振れの違いは、施工時の測量誤差による違いとみることができ、本来は一体的な設計とみてもよいのかもしれない。このような宮殿中心部で、振れの異なる事例は、恭仁宮でもみれる。造営背景や緊急性などに起因するのかもしれないが、この点も、平城宮・難波宮と紫香楽宮・恭仁宮の2グループに分かれて興味深い。いずれにせよ、宮町遺跡の正式な報告書をそろそろ刊行してもらいたいものである。部外者にとっては、そこから検討がはじまる……。