上記の本を読んだ。中国・日本・朝鮮・渤海の都について、東アジア的視野で比較検討したもので、しかも体系的で一般にもわかりやすい。これまで、中国の宮殿中心部の変遷について書かれたものはいくつかあるが、なかなか体系的には理解しずらかった。この本を読むとその変遷と画期がよくわかる。そして、日本の宮殿の変遷も中国との比較によって、その影響と独自性が見えてくる。ただ残念なことは、朝鮮と渤海については、著者が日中都城の専門であることもあって、つっこみがたらない。もっとも、文献が少なく、発掘調査も進んでいないことが大きな理由なのだからしかたがないのだが……。このあたりが解明されれば、東アジアの都城の比較研究が格段に進むのだろう。
吉田歓 『古代の都はどうつくられたか-中国・日本・朝鮮・渤海-』 吉川弘文館 2011.2刊行
・都をつくる-プロローグ-
・中華帝国の都
理想の都
前漢の長安と後漢の洛陽
太極殿の誕生
南北朝の都
隋唐長安城の誕生
・日本の都
藤原京への道
平城京遷都
難波宮の先進性
長岡京と平安京
・朝鮮三国の都
高句麗の都-南進する都-
百済の都
新羅の都-先年の都-
・海東の盛国渤海の都
渤海の建国
五つの京
・それぞれの都-エピローグ-
