その時薪能は急に雨が降り出してきました
屋根が有りませんでしたから大変です

観世流のお家元の観世元正(先代)さんと奥様
弟子一同は集まりました
お家元のご夫妻の後に私は座っていました

45年ほど前の大山阿夫利神社の火祭り薪能です
私は進行表を作っていましたからその責任が有りました
奥様が
「○○さんお仕舞でも舞われませんか?」
その場でその方は
「はい畏まりました」
と素早く立ち雨の中の舞台に進まれました

雨はバシャバシャ降っています
その方や地謡の方は黒紋付の正装です
壮絶な景色でした

私はそれまで喜多流の能をしていましたから喜多流が一番と思っていました
この雨の中すごい観世流の舞に打たれました
お流儀では有りませんね
感動しました

観世一門の方々で一番背の高い方でした
お家元の高弟のようでした
その時名前を聞きましたが忘れました

私は観世流の中でも名門の武田志房先生(武田家の大先生)について謡を習いました
それまでは喜多流でしたから羽衣などは観世流と喜多流の両方で謡えるようになりました

武田の大先生のご子息の二男の武田文志さんとご縁が有れまして
松鈴庵での文志さん友志ご兄弟の会を開きました

素晴らしい舞でした
文志さんは
「私はいつも一番に妻の感想を聞きます」と云われました
その時も松鈴庵に奥様はいられました
私もそのお話は良く分かる気が気がしました

その後
10年ほどたち喜多流の粟谷先生と出会いました
またいろいろなご縁が広がりつつあります