続・付き人奮闘記 112 | chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

2021年1月。嵐さんの休業を機に、妄想小説を書き始めました。
主役は智くんで、メンバーも誰かしら登場します。ラブ系は苦手なので書けませんが、興味のある方はお立ち寄りください。

 

 

 

「風磨も賛成なの?」

 

「大野さんは反対なんですか?」

 

「そうではないけど本人のいないところで盛り上がって欲しくはないんだ。

 今は本人の気持ちが一番大事だから」

 

「本人が賛成なら良いんですか?」

 

「まさかもうそんな話してるの?」

 

「同世代ですから、話の流れでこれからどうするのかは気になりますから、

 俺の感触だと悪い気はしていないように思います。

 やっぱり一人よりグループの方が心強いですからね」

 

「とにかく気持ちだけは聞いておくけど、勝手に暴走しないでね。

 俺達の方でも話し合わないとならないから」

 

「わかってます」

 

まあ風磨は心配してないけど、問題は隼人だな。

突っ走るくせがあるからその辺は十分に注意しないと傷つくのは誠也だからだ。

 

 

その翌日、翼から「たまには一緒に食事しない?」というLINEが来た。

このタイミング。隼人から連絡が行っているのかもしれない。

それでも、たまには翼とも話をしたいからOKをする。

場所は俺の家。扉1枚隔てた隣に住む慎吾は現在はドラマのロケで留守。

 

食事は由夏ちゃんが作ってくれると言うので、俺はスーパーでビールとおつまみを買って帰る。

マンションの駐車場に着いた所で連絡したら、隣のマンションから直ぐに翼が出てきた。

 

「翼!」

 

思わず手を振ると笑顔で近寄って来た。

 

LINEはたまにしているけど会うのは久しぶり。

隣に住んではいてもなかなか時間がない。

 

「みんな元気?」

 

子供も1歳を過ぎた。

 

「うん。目が離せないけど可愛い盛りだね」

 

話ながら部屋へ行く。

 

「この部屋、住み心地は良い?」

 

「うん。快適」

 

「良かった」

 

最近の翼はファッション関係の仕事が6割に歌手が4割と言った感じだ。

芝居やバラエティーは暫くやっていない。

自分で運転して仕事場へも行くので、マネージャーの相葉くんも今は常時付いている事はない。

だから圭吾とのかけもちにまわっている。歌番組の時だけ付くようにしているらしい。

 

 

「隼人達の新曲聞いたよ」

 

食事を並べてビールを飲みながらゆったりと話す。

 

「久しぶりにあの高音を聞けて懐かしかったなぁ」

 

「でも重宝に使い過ぎたと思っている。翼の時も今度も…。

 誠也だって歌手なんだよ。デビューをしていないからと自由に使い過ぎた」

 

「そうかな。本人はそれほど気にしていなかったけどなぁ」

 

「話したの?」

 

「当時ね。歌えるだけで楽しいって言ってた。そう言う気持ちって変わらないと思うけどね」

 

「でももう30だよ。若い頃とは違う」

 

「そうかもしれないけど、昔の事を智さんが気にする必要はないってこと。

 今回のコーラスだって嫌なら断っているよ。嫌々ながらやる奴ではないでしょう」

 

「そうだね」

 

翼と話しているとなんとなく自分の考えすぎかもしれないと、少し軽い気持ちになれる。

翼とはもう仕事上での関係は殆どない。プライベートでの付き合いが多くなってきたから、

一人の男性の意見として素直に聞けるのかもしれない。

 

 

「今後の事も隼人から聞いているんでしょう」

 

「まあね。でもこれに関しては俺は何も言っていない。

 部外者が言う事ではないし、あくまでも誠也が決める事だからね」

 

「その誠也が3人の気持ちに傾いているとしたら?

 同世代だから色々な話をしたんだと思う。

 その中で一緒にやろうという、一種の軽いノリで話したんじゃないかと思うんだ」

 

「智さんは誠也がグループに加わるのは反対?」

 

「あいつはずっとグループで失敗して来ている。

 グループに拘り過ぎたからデビュー出来なかったのかもしれない。

 だったら一度、ソロで自由にやらせてあげたいと思う。

 もう本当に最後のチャンスだから……」

 

「俺達は崖っぷちからが強い。俺も隼人もそうやって這い上がって来た。

 誠也もそうなるよ、きっと……」

 

 

翼や隼人を受け持った時はもう少し若かった。

それに翼も隼人もデビュー経験はあった。一度どん底に落ちた所を俺達と一緒に再生してきた。

でも誠也の場合は30歳までデビュー経験がない。

それだけで翼や隼人の時とは違う。

だから慎重にもなる。

 

 

「智さん、急いで決めることはないとは思うけど勢いも大事だよ」

 

「翼は口出しはしないんでしょう」

 

「うん。だから独り言。

 俺はね、誠也はソロよりグループの方が合っていると思う。

 特にあの高音はグループにいるからこそ活かされると思う」

 

 

翼の言葉にハッとなった。

 

「あの高音はグループだから活かされる」

 

そうか。そうだよな。コーラスまでやって貰ったのに肝心の事が抜けていた。

 

 

だけど……。グループにはことごとく嫌われてきている。

今更、大丈夫だろうか。

 

 

「誠也自身もグループでやりたいんじゃないかな。

 それでなければ何度もグループを辞めながらも、ソロでやっては来なかった。

 最後もそうだ。どうしてソロではなくて舞台を選んだんだろう」

 

「お前の独り言は長いなぁ」

 

そう言うとおかしそうに笑ってビールを飲み干した。

 

ありがとう、翼。

十分、参考になったよ。