顔の見えない友達 16 | chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

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2021年1月。嵐さんの休業を機に、妄想小説を書き始めました。
主役は智くんで、メンバーも誰かしら登場します。ラブ系は苦手なので書けませんが、興味のある方はお立ち寄りください。

 

 

 

「あこちゃん、あこちゃんは何処にいるの?」

 

突然、カズの声がした。

 

「カズ、あこちゃんは亡くなったんだよ」

 

死亡診断書を見せて説明するけどカズは首を振る。

 

「だって僕あこちゃん見たもん。あこちゃんに会わせて」

 

 

「あこを見たって?」

 

「昨日の帰りに東京駅であこちゃんを見たって言うんです」

 

俺は昨日の帰りの騒動を話した。

 

その間もカズは「あこちゃん、あこちゃん」と言い続けている。

声を荒げる訳ではないけど、

「あこちゃん、あこちゃん」「あこちゃんが僕を待ってる」と言い続けて、

「公園へ行く、あこちゃんが待っている」と言って立ち上がったのを俺が抱き止める。

 

院長が翔くんに聞く。

 

「家には連れて行ったんだろう」

 

「行ったよ。仏壇にもお参りをしてくれたし、あこの部屋も見せた。

 理解したと思ったんだけど……」

 

「それだけ好きだったんだろうな。メル友だとバカにしていたけど二人にとっては

 本当に大事だったんだろうな」

 

耕紀さんがそう言って、

 

「父さん、これはのんびりしていられないよ。すぐに検査した方が良い」

 

耕紀さんの言葉にカズを抱いていた手に自然と力が入る。

カズが何処か得体の知れない所へ連れて行かれそうで怖い。

 

そんな俺や叔父を見ながら、

 

「まずは脳を中心に検査を行ってそれから治療方針を決める」

 

「本当に記憶喪失なのか?」

 

「見ている限り部分的な記憶喪失だと思います。

 それも含めて脳外の先生とも相談してこれから調べます」

 

どうやら耕紀さんは神経科の医者らしい。

初対面で怒られた印象が強くてどうしても怖い先生と言うイメージが強い。

 

何もここの病院でなくても良い筈。神経科なんて他にもたくさんある。

 

そんな俺の気持ちを見抜いてか翔くんが笑いながら言った。

 

「耕紀さん怖がられてますよ。智くん大丈夫だよ。

 耕紀さんはまだ研修医だから、ベテランのちゃんとした医者が主治医に付くから。

 それに僕も微力ながらお手伝いするから」

 

「ちゃんとした医者ってなんだよ」

 

「だいたいお前はその風貌だけでも怖いんだから、もっと笑顔でいないと

 患者さんに好かれないぞ。神経科は特にコミュニケーションが大事だから、

 患者さんに嫌われたら致命的だぞ」

 

「わかりました。つい余裕がなくて怒ったのは謝ります。智くんゴメンね。

 これからは智くんにも協力して貰わないといけないからよろしくね」

 

横から叔父も言う。

 

「智、心配しなくて大丈夫だよ。こう見えてコウちゃんは優しい子だから」

 

「おじさん、いい加減コウちゃんはやめてくださいよ。俺ももうすぐ30ですよ」

 

「コウちゃんはコウちゃんなの。俺の中ではずっと」

 

 

そうしたらカズが俺から離れて耕紀さんの所へ行った。

 

「あこちゃん、探してね」

 

「わかったよ。君のあこちゃんを全力で探そうね」

 

「耕紀さん」

 

「良いんだよ、翔。カズくんの病気を治すことが彼にとってはあこを見つける事になるんだよ」

 

 

そうか病気が治って記憶が戻ったら本当の事を知る。

 

それがカズにとってはあこちゃんを見つける事になるのかもしれない。