地獄の学校【社会人編】 30 | chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

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2021年1月。嵐さんの休業を機に、妄想小説を書き始めました。
主役は智くんで、メンバーも誰かしら登場します。ラブ系は苦手なので書けませんが、興味のある方はお立ち寄りください。

 

 

 

警察の捜査が入ったけどそんなに大袈裟な物ではなくて、

鑑識も警官も人数は少人数で俊敏に終わらせて帰って行った。

 

俺の取り調べは雅也さんの部屋で、直也さんはさすがに一応重要参考人なので

警察へ連れて行かれた。

ずっと側で直也さんを見張っていた岡田の話だと、今日はだいぶ冷静になっていたと言う。

 

 

結局、警察の調べで直也さんは無実だとわかった。

でも、直也さんは犯人を見ていた。

 

俺が落ちた直後に階段の上に駆け寄ったそうで、俺の小型カメラに映った靴は

直也さんの物だった。犯人は社員の一人。仕事がうまく行っていなかったらしい。

そんな中で俺が助手になって、一人だけ優遇されているのに腹を立てての犯行だった。

 

 

「犯人を見ていたならどうして言わなかったんだよ」

 

数日後、直也さんが釈放されて、真也さんと共に雅也さんの部屋に挨拶に来た。

 

 

「その前に兄さんも謝るべきじゃないですか。勝手に犯人だと決めつけて

 昔、俺もされましたけど監禁も犯罪ですからね」

 

「わかってるよ。自衛官だから少し荒っぽいの」

 

「そんなの理由になりませんよ」

 

「真也、お前怖くなったな」

 

「これからは兄さんにも遠慮しないで物が言えないといけないと思って、

 そうしないと今度みたいな事がまた起こりかねませんから」

 

「今までも結構言っていると思うけどなぁ」

 

 

 

「なんだか雅也さんの立場、弱くなった?」

 

「あれが二人の作戦」

 

松兄が言う。

 

「作戦?」

 

「ああでもしないと直也が帰ってきにくいだろう。

 犯人を知っていて喋らなかったのも罪にはなるからな」

 

 

そう言えばどうして犯人を庇ったのだろうと思っていたら、

 

「直也、すまなかったな。またみんなでワイワイやって行こう」

 

「はい。俺もすみませんでした。俺も大野くんに嫉妬していたんです。

 何だかみんなと仲良くしていてそれも羨ましかった」

 

「ほら、俺の言った通りじゃん」

 

カメくんが言うけど、次の直也さんの言葉に驚いた。

 

「それに、あの事故で雅兄さんの人生が変わったと思うと、ずっと素直には見れなかった。

 いつかここもやめて欲しいと思ってた。和也の好き勝手な行動を助長させている気もしたし、

 本当は階段で助けなかったのも……」

 

「いい加減にしろ」

 

真也さんが怒った。

 

もしかしたら、俺本当に直也さんに落とされていたのかもしれない。

 

そう思ったら階段から落ちる様子が鮮明に脳裏に浮かんで悲鳴を上げていた。

 

 

「智」

 

気が付いたら松兄の腕の中にいた。

 

「大丈夫か?」

 

「松兄、俺、ここやめたい」

 

「智…」

 

「家に帰りたい。怖い」

 

「落ち着け大丈夫だから。俺が傍にいるから」

 

「イヤだ!帰して!」

 

松兄の腕の中で暴れていた。

 

自分でも自分が収拾付かない。なにをやっているのか分からない。

ただ怖い。暫くして薬を飲まされて眠った。

 

 

 

 

 

 

 

直也語り

 

目の前で大野くんが暴れているのを、ただただ見ていた。

そうだ、学生の時もこんな事があった。自分のやっている事に不安を感じて、

窓から飛び降りようとしたこともあった。

 

いつの間にか強くて誰にでも好かれる奴と言うイメージが付いていたけど、

本当は俺と同じ。常に不安を抱えながら生きているんだ。

 

松岡くんや和也に「出て行け」と言われながらも、大野くんが気になって動けない。

 

「直也、行こう」

 

真兄さんが優しく言う。

 

「もう少しだけ…」

 

そう言ったら真兄さんが頷いてくれた。

 

結局、そのまま薬で眠ってしまった大野くんの傍に居続けた。

今はそんな事しかできない。

 

大野くんが元気になったら俺が出て行こう。

俺はやっぱりここにいてはいけなかったんだ。

 

5人兄弟、みんなが楽しくやっている中で、いつも俺だけが浮いていた。

でも雅兄さんが好きだったから、雅兄さんの夢を応援したくて高校の教師になった。

でも勤務地の高校でも俺は浮いていた。

元々兄さんが学校を作るまでの腰掛のつもりだったからそれでも良かった。

 

でもあの事故で雅兄さんの夢が一度は途切れた。

それでも、ここを開校できた時は嬉しかったなぁ。

直ぐに高校教師を辞めて参加した。

 

だけどここでも俺は浮いていた。

雅兄さんが真兄さんを頼るのもわかっていたし、

和也も怒られながらもなんだかんだ可愛がられていた。

 

それでも兄弟なら我慢できた。だけど大野くんが、あの雅兄さんの夢を一度は壊した

大野くんが可愛がられて助手にまでなったのが俺には悔しかった。

 

今回の階段の転落事件も、大野くんの小型カメラに俺の靴が映っていただけで

雅兄さんには犯人扱いされた。ただあれだけの事だけで弟の俺の事よりも大野くんの方を

雅兄さんは信じた。それが何よりもショックだった。

 

 

でも、それももう終わりだ。

 

大野くんに一言だけ謝って俺はここを出よう。

俺なんていない方が、みんなが楽しくなる。

 

やっぱり俺はこの中に入るべきではなかったんだな。

 

 

ゴメンね、大野くん。

 

最後まで好きになれなかったけど、もうさよならしよう。