付き人奮闘記 【年末編】 5 | chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

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2021年1月。嵐さんの休業を機に、妄想小説を書き始めました。
主役は智くんで、メンバーも誰かしら登場します。ラブ系は苦手なので書けませんが、興味のある方はお立ち寄りください。

 

 

 

12月24日

 

ファンクラブライブ当日。

 

1部は昼過ぎの開演なので、朝早くに来て軽くリハーサルをやる。

 

来年になったらどのくらい翼の仕事に関われるか分からないから、

今日は目に焼き付けて置こう。

 

今回のライブは企画から翼が関わって、まさに自分の手で作り上げたライブになる。

そういう意味では小さい会場だから出来たのかなとも思う。

 

セトリはクリスマス当日なので、他の歌手のクリスマスソングを集めた「クリスマスメドレー」を途中に挟んだ。他人の曲はここだけで、あとは自分の持ち歌。

まだ人気が出てから2年目だからそんなに持ち歌は多くはないけど、翼には影の持ち歌がある。

何処にも披露していない曲。元々音楽好きだから昔から作っていた曲もあるし、

「翼プロジェクト」の中で作った曲でお蔵入りになったものもあるので、

そう言う曲も今日は歌うらしい。

 

 

1回目が始まった。

 

ステージと客席とが近い。

売れない頃、こういう所でそれでもお客さんが満員にならない中でやっていたこともあるけど、

今日は超満員。これを見ているだけでも嬉しくなる。

 

今日はクリスマスのせいか、お客さんの洋服も少し華やか。

会場は入り口にクリスマスツリーが置いてあるだけで、特にクリスマスは意識していないけど

ファンクラブに入っている子は女性が多いから、それだけでも華やかな気分になる。

 

1曲目からノリの良い曲を選んだから、全員立ち上がって最初から飛ばす。

そして一汗かいたところでトークを挟む。

この辺はお客さんの体力を考えているのかなと思うくらい、うまいタイミングでトークに入った。翼はトークは苦手。だから余り多くはない。今回もちゃんとしたトークはここだけ。

 

今年1年の事を振り返りながら、

「今、ドラマの撮影の最中なので、凄く苦手な僕にとっては鬼門なドラマですが、

 精一杯死ぬ気で撮ってるので、来年の春の放送予定ですがよろしくお願いします」

 

盛んに鬼門だとか死ぬ気だとか言いながら、ファンの子はそんな本音を聞けるだけでも嬉しい。

トークは苦手だけどバラエティーの経験は可なりある翼だから、笑わせるのは上手い気がする。

 

俺だったらこんな事言えないなぁ。バラエティーはこれからもやって欲しいな。

 

トークが終わると次はクリスマスソングメドレー。

 

結構、誰でも知っていそうな有名な曲を選んだので、会場でも口ずさんでいる人がいる。

それを歌いながら観ていたのだろうか途中で

「知っている人は一緒に歌ってください。今日はクリスマス。みんなで盛り上がろうね」

 

こんな楽しそうな翼はライブでしか観られない。

 

やっぱり根っからの歌手なんだな。歌が大好きなんだ。

 

 

クリスマスソングが終わるとまた自分の持ち歌に入るけど、ここから数曲は初披露の曲。

歌う前にその説明を少しして歌に入る。

 

ファンの子って凄いなと思うのは初めて聞いた曲の筈なのに直ぐに溶け込んでくれて、

アップテンポの曲では手拍子もしてくれる。

こういうのは歌手としての醍醐味だよね。

長い年月を経て漸く日の目を浴びた曲たち。翼がとても輝いて見えた。

 

そして早いものでエンディングへと向かう。

今年出した曲を歌い、ライブで定番のラストの曲を歌って終わる。

 

 

アンコール曲は翼はいつも決めていない。

 

「アンコールとは本来お客さんから貰ってやるものだから、

 最初から決めていたらアンコールにならない」という翼の考えだ。

 

 

翼の言うことは正論だけど、いきなり決めるのも大変なんだよ。

今回は会場が小さいから、最悪アカペラでも大丈夫か……と思ったら、

まさにそれを狙っていたのか思いがけない歌を歌った。

 

和馬の歌だった。

 

「ぼくの兄の和馬の名曲です」

 

そう言ってアカペラで披露した。最も誰も演奏はできないだろう。

 

客席がシーンとなる。

 

こうやって聞くと、やっぱり和馬とは声質が似ているんだな。

 

和馬、お前の歌を聞いているみたいだよ。

 

歌い終わった後にふと俺の方を見た。

 

もしかして、これ俺の為に歌ってくれた?

きっとそうだ。たくさんの歌の中からこれを選んだのは俺が好きだと知っているからだ。

 

年内で「翼プロジェクト」が終わるから、そのお礼の意味もあったのかな。

 

これは俺だけでなく、他の4人にも向けた歌なのだと思う。

いつのまにか仕事の潤以外の3人も来ていた。

 

 

「粋なことやるなぁ」

翔くんが呟く。

 

「でもこれは俺達にとっては名曲だけど、ファンイベントだよ大丈夫?」

 

「客席見てみろよ。みんな満足しているよ。

 なんにせよアカペラということが最高のプレゼントだな」

 

相葉くんの心配の声に、ニノがそう言ってくれる。

 

そうだね。アカペラが最高のプレゼントだね。

客席では泣いている子もいる。

 

 

 

夜からの2部も内容は曲が少し変わったのと、アンコールがまた和馬の曲だけど、

今度は和馬のラストの曲になったものだ。

 

このライブは配信になっているから、もしかしたら昔の和馬のファンの人も聞いているかも

しれない。そこまで考えて選んだのかもしれない。

 

2部も大歓声のうちに終わった。

 

帰りはお客さんが一斉に出るので外で誘導していたら、いつものおっかけの女子高生が

俺の手を掴んだ。目が真っ赤でまだ泣きそうだ。

 

「大野さん、とても素敵なライブだった。和馬に伝えて、ありがとうって」

 

「わかった。気を付けて帰るんだよ」

 

「ありがとう。大野さん、メリークリスマス!」

 

俺に言ってどうするんだよと思いながら、ちゃんと翼にも伝えるね。

 

始まる前は大きな会場が良いとか色々と思っていたけど、小さいからこそ出来た事もある。

 

ここで良かったのかもしれない。

 

素敵なクリスマス・イブになった。

 

 

 

 

 

 

 

「年末編」前編はここまでです。

後半は30日前後くらいから出す予定です。

よろしくお願いします。