映画の字幕翻訳家デビューをしました | アメリカ産天然夫との国際結婚の日常。通訳翻訳者・英語コーチのエバンス愛のブログ

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通訳、翻訳、英語教材制作、英語コミュニティ運営をしています。The Economist(英雑誌)をヒーヒー言いながら毎日読んでます。英語オーディオブック聞いてます。
高い英語力と大和魂を持って、日本の素晴らしさを海外に伝える人をたくさん育てるのが目標です!

映画の字幕翻訳家デビューをしました。



英語字幕の作成風景を大学受験生に公開しているところ。



映画の字幕翻訳って、かっこいいなードキドキ
ずっと憧れはありました。

でも、なりたい人はめちゃくちゃ多いのに
実際に映画の字幕翻訳者になれるのは、ほんの一握り。


ものすごく狭き門です。
 

 


でも、思いもかけないところから
本当に奇跡としか思えないご縁をいただき、
叶わない夢だと思っていた字幕翻訳に
携わらせていただくことになりました。



その映画は、
日本の自主制作のドキュメンタリー映画なのですが、
私が参加している「NEXT DIMENSION」という

ビジネス経営塾を通じてこの映画と出会いました。


詳しくはこちらに。
NEXT DIMENSION(ネクディメ)で私が幸せになった理由





私は、NEXT DIMENSIONをきっかけに独立起業できたりと

私の人生は本当に180度変わったのですが、

そのメイン講師である小田さんが、

ドキュメンタリー映画を作ることになったのです。



小田さんの仲間である
「御食事ゆにわ」という飲食店の
店長ちこさんが主人公の映画です。

 




私は、NEXT DIMENSIONの懇親会で
はじめて、この「御食事ゆにわ」で食事をさせていただき、
ちこさんのお料理のおいしさに感動したのでした。




ものすごくおいしいのですが、ただおいしいとか
無添加の自然素材を使っているとかいうことではなく、
そこの食事を食べるだけで、心と体が元気になったり、
悩みが吹き飛んだり、涙が出てきたりするんです。



それは、ちこさんの料理は
小田さんがセミナーで話したり相談に乗る時と同じく、
食べる人、関わる全ての人の幸せを祈って
作られたごはんだからです。






食べた人が元気になり、悩みが軽くなり、
できなかったことができるようになり、
子供のような笑顔になっていただけますように。



そう祈って作られたごはんは、食べると

「ああ、こういうごはんっていいなあ」
「毎日、こういう気持ちで食事ができたら、どんなに幸せだろう」


という、なんとも温かい気持ちになるのです。






飲食店というのは、本当に厳しい世界です。
採算の面でも、体力の面でも。

でも、ちこさんは、自分の限界を超えて、
食べる人の幸せのために全身全霊で食事を作り、
食を通じて日本を、世界を変えていこうとしている。


本当に、こういう人がいるんだ、と
最初は信じられませんでした。


こんな崇高な思いで
食と向き合っている料理人って、
日本に、いや世界に、いったい何人いるだろう。




「こういうごはんを、毎日食べられたらいいなぁ」
「こういう温かい人たちと、一緒に生きていきたいなぁ」


と思った私は、夫のマイクを説得し、
なんと、その飲食店がある大阪に引っ越したのです。


私だけでなく、そうやって
引っ越した仲間が他にもたくさんいて、
今では100人以上が引っ越してきています。



 

 

 

ちこさんを描いた映画ができると聞いた私は、

すぐに

「その映画に英語字幕をつけて、
 世界に広めるお手伝いをしたい!」


と思いました。




「私は、小田さんやちこさん、
 その仲間たちの生き方を海外に英語で発信し、
 世界にいい影響を与えるために
 ここに引っ越してきたのかもしれない」


そう、直感で思ったのです。



なんの根拠もないけど、そう思ったのです。



むしろ、

「そうだった、そのために私はここに来たんだった」

と、忘れていたことを思い出した、
という感じなのです。



それを「思い出した」とき、
なぜかわからないけど、涙が溢れて止まりませんでした。








そして、撮影が進み、
『美味しいごはん』
というタイトルの映画が完成しました。

 

 

 




でも、映画を最初に見たとき、
私の心は打ち砕かれました。


「む、難しすぎる・・・
 これは、私には到底英語にできない・・・」




映画には、古神道や禅の思想

説明するシーンがあったり、
オノマトペ(擬音語・擬態語)が大量に使われていたり、


日本語特有の言霊(同音異義語)

でてきたりしていました。



たとえば、この映画の中の最重要モチーフが
「おむすび」なのですが、おにぎり
これ一つをとっても、
英語にするのはものすごく難しいです。



「おむすび」を、普通に英語にすると、
「Rice ball」
 

 

でも、これって、ただ
「お米をボール状にしたもの」
という意味以上の含みは何も表せないのです。



それに対して、日本語の
「おむすび」という言葉には、
「(両手で)結ぶ」「ムスビ(統合)」という意味があり、
なんともほっこり温かいぬくもりが感じられます。

「お米のボール」とは
比べ物にならないほどの深みというか、
背景が含まれているのです。




とにかく
英語でその世界観を表現するのが

超・超・超・難しい映画だったのです。



小田さんも、いろんな専門家に
映画『美味しいごはん』の翻訳を相談したそうです。

でも、みんなから
「難しすぎる、英語化は無理」
と言われました。





そして、小田さんは
ある英語界のレジェンドのことを思い出します。

それは、松本道弘先生です。







松本先生は、米国大使館の元同時通訳者で、

NHKの英語講座で講師を務めていたり、著書も多数あり、

安河内哲也さん(超有名予備校講師)などを
育てた人でもあります。


英語を勉強している、40代後半以上の人なら、
必ず一度は聞いたことのあるお名前のはずです。




しかも、
「英語にならない日本の心を英語にする巧みさ」
にかけては、日本で松本先生の右に出る者はいません。

英語が堪能なのは当たり前で、
日本文化や、日本の心にものすごく深い理解があるのです。




「『美味しいごはん』の英語翻訳をお願いするのは、
 松本先生しかいない!」


そう思った小田さんは、
それまで何の面識もなかった松本先生に
連絡を取りました。



「私は、大阪を拠点に仲間たちと
 セミナー事業、出版、飲食店をやったり、
 学習塾の運営などをしています。

 今回、食の現状を変え、よりよい世界を作っていくために
 こういうドキュメンタリー映画を作ったのですが、
 ぜひ先生にご協力いただき、英語字幕をつけたいんです。

 今まで、いろんな方に英語化の相談もしましたが
 難しいということで、断られてきました。

 この翻訳ができるのは、日本で松本先生しかいません!」



そして、松本先生の紘道館という私塾に
映画のDVDを持参し、見ていただいたそうです。




すると、松本先生は映画を見るなりすぐに

「この映画はいいね。
 ぜひ、英語にして世界に広めよう!」


とおっしゃり、字幕翻訳を作ることが
決定したそうです。





そして、字幕制作がはじまりました。


小田さんからは、
「ぜひ愛さんとマイク(夫)にも手伝ってほしい」
と声をかけていただき、参加しました。



マイクと私で、まず英語で下訳(たたき台)を作り、
それを松本先生と一緒に全てのシーンを何度も見ながら確認して
斬れる「松本英語」に変えていきました。




最も言いたいことが伝わる表現を探して、一つひとつの言葉を英語にしていく。




たとえば、映画の中の

「彼女は、人が自然に集まってくる人なんです」

というセリフ。




イケてない普通の英語が、これ。

"People are naturally drawn to her."


実際、私はこう下訳を作りました。






で、松本先生の斬れる英語だと、どうなるか。


・・・もう、びっくりしますよ。



"She is a magnet."




じ、磁石ーーー???
どっひゃーー!!ポーン

って、思いませんか?


私は、腰を抜かしそうになりました。(笑)


でも、この上なくシンプルだけど、
「自然に引き寄せられる」っていうイメージが
視覚的にもドンピシャです。



こういう英語がどんどん繰り出されて、
私は、字幕を作りながら
感嘆のため息が止まりませんでした。











私は、かれこれ
15年間、翻訳に携わってきました。


すごく苦労して翻訳の訓練を積んできて、
自分で言うのは大変おこがましいんですが、
「翻訳者としては上手い部類」という自負が
正直言って、ありました。


その、私の天狗の鼻が、ぽっきり折られました。





松本先生に出会って、
「日本人で、こんなに英語ができる人がいるんだ」

と、本当に衝撃を受けました。


そして、自分とのあまりの差に愕然としました。

「レベルが違う」ではなく、
「次元が違う」・・・


今まで、
こんな敗北感を味わったのは初めてです。






日本語と英語を両方使いこなす
バイリンガルは、たくさんいます。

でも、松本先生は
そういう次元じゃないんです。



ネイティブのマイクですら、
松本先生の英語力には驚愕しているくらいです。

「彼の脳内辞書の豊富さは、アンビリーバブルだ」

と。


そんな人と出会えて
一緒にお仕事をさせていただけて、感じたのは
めちゃくちゃ爽快な敗北感です。




松本先生は、79歳。

普通の人なら、「おじいちゃん」っていう年齢ですが、
松本先生はめちゃくちゃパワフルで元気で、

頭もキレキレです。


英語に関してはものすごくストイックですが、
性格はとってもお茶目で気さくで、
楽しそうに話し始めたら止まらなくて、
私はそんな松本先生が大好きです。




字幕制作の期間は、松本先生と小田さんと

朝から晩まで熱く議論を交わしながら
英語を作っていきました。



字幕翻訳なので、「1秒間に○字」という
字数制限もあります。

長すぎても、短すぎてもダメです。

制限の中で、最も言いたいことが伝わる表現を探して、
必死に頭をひねりました。


時には、外国人により伝わるように
日本語では言っていないことを
英語の中に盛り込んだりもしました。



熱い、数日間でした。


私は、本当に本当に幸せでした。



私は、映画の制作が決まったときから

「映画を世界に広めるため、
 翻訳をさせていただきたい!」


と、強く願っていました。



でも、出来上がった映画を見て


自分の英語力と日本文化に対する知識では
全く力が及ばないことを痛感しました。





それが、松本道弘先生という英語界の巨匠との
ご縁を小田さんにつないでいただき、
こうして映画の翻訳に携わらせていただくことができました。



小田さんやちこさんとの出会いがなければ
松本道弘先生との出会いもなかったし、
こんな熱い思いで翻訳をすることもなかったでしょう。



この映画が、日本だけでなく世界に広がって
食を通じて幸せな人たちが増えていってほしい。

幸せな食卓が増えて、
世の中から争いや悲しみが少しでもなくなってほしい。

 







そのために、私の持てる力を
この翻訳に捧げたい。

ただただ、そういう思いでした。


小田さんやちこさんのように
「世のため人のため」に生きる人に、私もなりたい。



お二人の足元には全く及ばないけれど、
その目標に、今回の翻訳を通じて
ほんの少しだけ、前進することができたような気がしています。

 

 

 

 

映画を英語字幕付きで初公開した

イベントの報告は、以下の記事で書いています!

 

「すげえおいしかった」を英語にすると?(ゼロレボ上映会イベント報告)

 

 

 

 

 

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