―[夏の悲惨な思い出]―
収入は上がるも、税金でカツカツに
今年のお盆休みは9連休。一般的なサラリーマンには嬉しい話だが、自営業やフリーランスの人にとってはそんなに休んでいる場合ではないというのが本音である。
「フリーランスの洗礼を受けました……」 そう肩を落とすのは一昨年の春、フリーのライターになった太田裕二さん(仮名・37歳)。1年目はそこそこの収入だったという太田さんが「フリーランスの落とし穴」に陥ったのは去年の夏のことだった。
「それまでライターとしての収入はほとんどなく、アルバイトと二足のわらじで生活していました。イイ歳してアルバイトなんて周りにも言えず、当然彼女なんてできませんでした。それが2年前、たまたま書籍の出版や新聞の連載などが重なり収入が一気に上がったんです。それを機にライター1本でやっていこうと、思い切ってアルバイトを辞めたんですが、現実は思うように行きませんでしたね……」
まず、太田さんが当たったのは税金問題だ。
「それまではアルバイトの収入だけの納税額だったので大した額ではなかったのですが、それが本の印税などで急に上がったんです。しかも、それまで片手間にしかライターをしていなかったので経費も付けていなくて。収入がそのまま税金に反映されてしまって、保険料なども合わせると月10万円近くの負担になりました。それでも経費で落とせるところはすべて落とそうとなるべく節税対策をするようにしていました」
一見、収入が上がったかのように見えたが実はカツカツだったという太田さん。しかし、さらなる悲劇が訪れる。
「夏に彼女ができたんです。それまでは36歳のフリーターだったのに『フリーライター』と言えるようになった途端、割とモテ出して。たまに行くバーで26歳のサブカル好きな女の子と知り合って告白されたんです。女の子とマトモに付き合うなんて20代前半以来で正直、浮かれました。若い彼女ができたと周りからも羨ましがられましたね」
遅れてきた青春に浮かれまくったという太田さん。夏ということもあり、今まで行きたくても行けなかった花火大会やフェスなどのイベントに彼女と行きまくった。
「彼女はOLをしていたので、去年のお盆休みは土日も入れて5連休。お盆休みは彼女が一緒に旅行に行きたいと言ったので沖縄に行くことに。旅行代は2人で20万円しましたが、本の印税が少し残っていたのでまぁ、今年くらいなら……と奮発しました。普段なら旅行中でもパソコンを持って行って仕事をするんですが、彼女が『仕事は忘れてゆっくりしようね』と言うのでパソコンすら持たずに行って……3泊の旅行中、何もせずただ彼女とダラダラ過ごしていましたね」
「書いている媒体の原稿料は大体月末に振り込まれるんですが、15万円しか入ってなかったんです。いつもなら30万は入っているはずなのに……。確かに連載など締切が決まっているものだけは送ったのですが、他の自由連載や締切が決まっていないものは彼女と遊びすぎて一切仕事していなかったんです。毎月、大体の給料を計算して書く量を振り分けているのに、彼女に入れ込みすぎてそれすらしていませんでした……」
しかし、これだけでは終わらなかった。
「先月のマイナスを埋めるように翌月、仕事をしまくっていたら彼女に浮気されたんです。浮気相手は飲み会で知り合った自営業のコンサル会社の社長で、同じ個人事業主でも僕とは大違い(泣)。理由を聞くと、僕が今月になって仕事ばかりするようになってつまらないと言われました。彼女に入れ込みすぎて仕事しなかった僕も悪いですが、結局金も彼女もすべて失う結果になってしまいましたね……」
世間は連休でもフリーランスに休みはない。太田さんは今年のお盆、どこにも出かけずに仕事に打ち込んでいるそうだ。