日本人にとって正月といえば、1月1日。ただし、国や地域によってその時期は異なり、「春節」と呼ばれる中国や台湾などの中華圏の正月は2月5日(※2019年の場合)、イスラム圏では9月1日(※同)だったりするわけです。
しかし、その時期が現地の正月だとは知らずに海外旅行を予約してしまう人も多いはず。もちろん、正月だからといって旅行に影響を及ぼすことは少ないですけど、なかにはとんでもない被害に遭ってしまった人もいます。
◆4月がタイの正月とは知らずに旅行
「観光名所やレストラン、お土産などはガイドブックでチェックしていたのに、まさか旅行時期が現地の正月と丸かぶりしているとは思ってもいませんでした。
確かに、後で調べたら現地の祝日とか載っているページに書いてあったんですけど、普通そんなところまで調べないですよね……」
そう振り返るのは、現在2人目のお子さんを妊娠中の小窪玲子さん(仮名・31歳)。それは彼女がまだ独身だった5年前の4月、親友と2人で訪れたタイでの出来事だったといいます。
「ちょうど『ソンクラーン』と呼ばれるタイ正月の時期だったんです。最初は旅のパートナーでもある友達の仁美(仮名)と『この時期ならではのイベントとかも観れたらいいよね~』ってのんきに話していたんです。けど、観るどころか自分たちが巻き込まれるとは思ってもいませんでした」
夜、タイに到着した2人が向かったのは、バンコク市内のカオサン地区というエリア。ゲストハウスや中級ホテルなどお手頃価格の宿が多く、屋台や飲食店、お土産屋などもひしめく世界最大のバックパッカー街としても知られる場所です。
◆ホテルに向かう途中、見知らぬ男女から次々と水を浴びせられた
「私たちは別にバックパッカーじゃないですけど、そういう雰囲気を味わってみたくてカオサン地区のホテルを予約していました。ただ、ホテルの前まではタクシーで行けなかったため、少し離れた通りの路上で降ろされ、そこから歩いて向かうことにしました」
ところが、歩行者天国となっていたカオサン地区のメインストリートに入った瞬間、いきなり大量の水を浴びせられてしまいます。
「隣にいた仁美にも水がかかり、2人ともビショ濡れでした。しかも、私たちに水をかけた白人の若い男性はハイテンションで『ハッピィ・ニューイヤ~!』って叫びながら自分でも頭からバケツの水をかぶっていました。
ソンクラーンってこういうイベントなんだと知った瞬間でした(苦笑)」
ちなみにソンクラーンは別名「水かけ祭り」とも言われ、カオサン地区はバンコク市内でも特に盛り上がる会場のひとつ。ショットガンサイズの巨大な水鉄砲にゴーグル着用と完全武装している人も少なくありません。
おかげでホテルに着いたころには2人とも全身ずぶ濡れ。傘やカッパなどの雨具も持っていなかったため、いろんな人から水をかけられてまくり、避けようがなかったといいます。
「予約していた宿がカオサン地区のメインストリート沿いで、水を掛け合っている人たちの間を通らないとたどり着けなかったんです。本当は裏通りからも行けたみたいですけど、初めて来る場所だったから裏道なんて全然分からなくて」
ホテルの部屋に入り、すぐシャワーを浴びてようやくひと息つくことができましたが、脱いだ服は白地だったはずなのに薄いピンクっぽい色になっていたとか。
◆翌日は自分たちも水かけ祭りに参戦
実は、ソンクラーンでは染料を溶かし込んだ水をかけ合うため、洗っても汚れが落ちにくく、地元の人は汚れても構わない格好で祭りに参加するそうです。
「結局、何度洗っても染料が落ちず、部屋着になりました。旅行のために購入し、その日初めて着たばかりだったから自分が濡れたことよりもショックでした。仁美もお気に入りのブランドのシャツを同じようにダメにされ、『絶対に許せない!』とキレていました」
ソンクラーンの水かけイベントは数日間にわたって行われることが多く、翌日も開催されると聞いた2人はバンコク市内の観光のついで水鉄砲をはじめ、汚れてもいいように安いTシャツとハーフパンツを購入。今度は水をかける側として前日の怒りをぶつけまくったといいます。
「前夜に私たちに水をかけた白人男性を見つけたのできっちりやり返してきました。相手は喜んでいたのでリベンジにはならなかったみたいですが、スカッとした気分になれましたし、なにより楽しかったです!
仁美とは何度も旅行に行ったのですが、一番強烈だったのはこのタイ旅行。今でも彼女に会うと、当時の話で盛り上がっています(笑)」
なお、今年のソンクラーンは4月13~16日で毎年このあたりの時期に開催。
この期間にタイを訪れる人は注意が必要ですが、水かけ祭り参戦を目的に旅行するのも面白そうです。日本でもこんなお祭りがあったらいいんですけどね。