「ショーケン」の愛称で親しまれ、テレビドラマ「傷だらけの天使」などでの個性的な演技で知られる俳優で歌手の萩原健一(はぎわら・けんいち=本名・敬三=けいぞう)さんが26日午前10時30分、消化管間質腫瘍のため、東京都内の病院で死去した。68歳。葬儀は近親者で営んだ。喪主は妻、理加(りか)さん。本人の意向で病気は公表せず、平成23年から闘病していたという。
昭和42年に「ザ・テンプターズ」のボーカルとして10代でデビュー。「神様お願い!」など多くのヒット曲を送り出し「ザ・タイガース」の沢田研二さんと人気を二分した。
女優の岸惠子さんと共演した47年の映画「約束」で俳優に転身。同年に始まったテレビドラマ「太陽にほえろ!」で新人刑事のマカロニ役を好演し、俳優としての人気を決定づけた。影のある役柄を得意とし、水谷豊さんとのコンビで社会から疎外された若者を演じた「傷だらけの天使」や倉本聰さん脚本の「前略おふくろ様」などのドラマでも高視聴率を獲得。神代(くましろ)辰巳監督「青春の蹉跌」や黒澤明監督「影武者」など名匠の映画でも存在感を示し、58年に「誘拐報道」で、61年には「恋文」などでそれぞれ日本アカデミー賞主演男優賞の優秀賞を受けた。
サントリー「モルツ」などのテレビCMにも出演。昨年、NHKのドラマ「不惑のスクラム」でラガーマン役を演じていた。
ショーケン死去 萩原健一さんの芸能活動はグループサウンズの歌手としてスタートした。その後、映画出演をきっかけに俳優としての才能を発揮。ぶっきらぼうなせりふ回しが特徴で、アウトローから純朴な人物まで幅広い演技ができる個性派俳優として活躍した。
俳優として本格的に活動するきっかけとなったのが映画「約束」(昭和47年、斎藤耕一監督)。そして、お茶の間に人気が広がったのは、テレビドラマ「太陽にほえろ!」(同年)への出演だった。マカロニ刑事役を演じ、壮絶な殉職シーンは視聴者の間で大きな話題となった。映画「青春の蹉跌(さてつ)」(49年、神代辰巳監督)では、学生運動から足を洗い、社会的な成功を求めるうちに恋人を殺害するに至る青年役を熱演。ドラマ「傷だらけの天使」(同年)では、社会からはみ出した若者を魅力的に演じ、屈折したアンチヒーローとして当時の若者たちに強い影響を与えた。
一転して純朴な青年を演じたのが、倉本聰さん脚本の「前略おふくろ様」(50年)。萩原さんが母にあてた手紙を読み上げるナレーションにはしみじみとした味わいがあり、ショーケンの見せた意外な一面が高い人気を呼んだ。
その演技は巨匠からも認められ、黒澤明監督「影武者」(55年)に武田勝頼役で出演を果たす。
一方、58年に大麻所持で逮捕され、一時芸能活動を停止。その後も私生活でのトラブルで週刊誌などを賑わすことがあった。
最近では昨年9月、地上波の連続ドラマ「不惑のスクラム」(NHK)に出演し、ラガーマン役で元気な姿を見せていた。
平成29年7月の産経新聞のインタビューに「これまで飄々(ひょうひょう)と生きてきた。期せずして俳優と歌手として活動することになった」と振り返っていた。
今月17日にミュージシャンの内田裕也さんが79歳で亡くなった際は、「近々、企画書をもって裕也さんと共演することを楽しみにしていましたが、奥様のご不幸があり、タイミングを逃しました」と、コメントを寄せたばかりだった。24日には妻の理加さんが、自身の公式サイトに、夫婦でトレーニングに励む写真を掲載。元気な姿を公開していたが、理加さんによると、容体が急変し、26日に「眠る様に息をひきとりました」という。
アウトロー、純朴な青年…個性派俳優として活躍