バブル崩壊後の’93~’05年の就職氷河期に社会に放り出され、その後のキャリア形成期にデフレとなり、給料が上がらないまま36~48歳の中年になったロスジェネ世代。就職、結婚、資産形成など人生におけるさまざまな局面で辛酸を舐め続けたロスジェネ中年たちは今、新たな問題に直面している。およそ2000万人いるといわれる、社会が生み出した「ロスジェネ中年」に救いはあるのか。そのリアルに迫る!

収入が乏しく3割が未婚。結婚できてもモラハラ化

 国のもくろみでは第3次ベービーブームをつくるはずだった“団塊ジュニア”のロスジェネ世代。しかし、その試算は大きく外れた。厚生労働省の「人口労働調査」では、彼らの未婚率は30%を超えている。

<男性未婚率の推移>
   35~39歳 40~44歳
1990年 19.1% 11.8%
2000年 26.2% 18.7%
2005年 31.2% 22.7%
2010年 35.6% 28.6%
2015年 35.0% 30.0%
※厚生労働省「人工労働調査」を基に編集部で作成

 この原因について、キャリア・カウンセラーの錦戸かおり氏はこう分析する。

「この世代も当たり前に恋愛して、本来は適齢期に結婚したかった、でも、できなかったんです。理由は就職してもデフレの影響で賃金が伸びなかっただけではなく、男女関係なく産み、育て、働くことを求められた。社会の要求が大きすぎて、自信が持てないのも頷けます」

 そしてロスジェネたちが結婚適齢期を迎えた“アラサー”の頃には、社会が混迷する事件が起きていたことも大きい。作家の雨宮処凛(あめみやかりん)氏は指摘する。

「’08年のリーマンショックです。これで失業し、結婚に至らず別れたカップルもいます。どうにか結婚し、出産しても、経済的かつ気持ちの余裕のなさから子供を虐待したケースを私は何件も見てきました。多少収入が低くても、実家の助けがあればまた違ってきますが、都心でお互い収入が低いカップルにとって、明るい結婚は想像できないでしょうね」

 また、雨宮氏は現代のロスジェネ中年たちが婚活をしようとしても、マッチングのすれ違いが起こっているとも指摘する。

「クビにならないよう、仕事にしがみつかなければならなかったロスジェネ世代は、婚期が遅れがち。35歳から婚活を始める人が増えますが、正直遅い。それに男性は家族モデルの憧れから20代の出産できる女性ばかりを求め、女性は自分の収入が低いことから安定性を求めます。30代後半で婚活をした友人男性は、年収を正直に300万円台と記入しただけで、女性全員に断られたそうです。婚活市場において、男性は年収で、女性は年齢でぶった切られています。お互い、求めているものが違いすぎて、ある意味生き残るために利用しようとしています」

結婚を勝ち取ったはずが家庭は崩壊に進むことも

 生存競争に勝ち残り、収入が安定し、運良く結婚できたとしても安心ではない。夫婦問題カウンセラーの玉井洋子氏は、「相談に来る大半がロスジェネ世代です」と語り、悩みは二極化しているとも。

「まずは“開き直り型”です。頑張って働いても報われなかったことから、自分がダメなのは全部他人のせい……とひねくれてしまうパターンです。妻が文句を言えば、『会社が悪い』『親が悪い』『妻のお前が悪い』と反省はしません。家庭では『尻に敷かれている』風だから、タチが悪い。これはモラハラの一種です」

最初は良き旦那だったはずなので、後発的になってしまうパターンだそうだ。そして……。

「もうひとつが“モラハラ型”です。就職氷河期を生き抜いたゆえにプライドが高く、男尊女卑が染みついています。生活費を渡さない、飲み歩いて家を顧みない、妻に命令口調など。その発言もナチュラルに上から目線で、妻が傷ついていることに一切気がついてません」(玉井氏)

 
 構図はブラック上司や、あきらめヒラ社員と同じ。孤独を味わうアラフォーになるか、結婚できても、妻を“ロスト”する可能性は高い。そこに幸せな家族モデルは、なさそうだ。
 
<ロスジェネ夫の言いがちなフレーズ>
●開き直り型
「俺を否定することは、親も否定していることになる」
「お前が俺のことを大事にしないから、浮気するんだ」
「俺と同じ稼ぎをしてから、文句を言えよ」
●モラハラ型
「専業主婦は家事しかしなくて、ラクでいいよな~」
「時間はあり余っているだろ?」
「お前には絶対できないよ」