15%を超える貧困率(等価可処分所得が中央値の半分を下回る相対的貧困者の割合)が社会問題となっている日本だが、その予備軍の増加も深刻化している。
◆“ほぼ貧困”に陥ってしまう家族の共通点とは?
「すでにギリギリの生活を強いられ、少しのトラブルがあれば、一気に深刻な貧困状態に陥る。そんな瀬戸際にいる家庭は確かに増え続けています」
世帯年収300万円未満の“ほぼ貧困”層の増加について、そう指摘するのは、社会福祉士の藤田孝典氏。その背景として「雇用の劣化」を藤田氏はまず挙げる。
「昨今、求人自体は正社員も含めて数多くありますが、あまりにも質が悪い。終身雇用を前提とした、いわゆる日本型雇用とは性質の異なる“名ばかり正社員”が大半。昇給も昇進もなければ、身につくスキルもない。会社側には長期にわたって雇い続ける気もありません」
そうして20代のうちにまともな職を得られなかった人はその後、よくて現状維持。多くはより劣悪な就労環境を余儀なくされる。
「いまや共働きでなければ、まず家庭を支えられない社会環境にもかかわらず、いまだに30~40代男性が『家族を一人で支えて一人前』
といった旧態依然とした価値観にさらされる機会があります。そういったプレッシャーが家庭不和の原因となり、深刻な場合は家庭内暴力へと繫がってしまいます」
さらに家族とのコミュニケーション不足もまた貧困を加速させる。
「本来は収入が十分でない人ほど周囲とコミュニケーションをとり、支え合う必要がある。にもかかわらず、知人はおろか家族とのコミュニケーションをとらず、残念ながら家計の計画的な運用がままならないケースもあります」
さらに貧困化へのもう一つの引き金が予期せぬ病気だ。
「自分や家族がいつ働けなくなるかは誰にもわかりません。日々のストレスが多いのならなおのことです。介護のために離職を強いられることもあります。そうして収入を失うと、貧困化が一気に悪化することも」
そして、何より恐ろしいのがこれらの要因が2つ以上合わさり、事態をより深刻化させ、困窮から抜け出せなくなることである。
「どこかの歯車が狂いだすと、ほかの問題も連鎖することは珍しくありません。貧困の芽は早めに取り除く必要があります」
すでに一つでも身に覚えがあれば、“ほぼ貧困”は他人事ではない。
《貧困に至る3要因》
1.20代の就活失敗
2.自分or家族の病気
3.家庭内のコミュニケーション不足
“ほぼ貧困”に陥ってしまうケースとして「20代での就活失敗」「家庭内のコミュニケーションの欠如」「自身or家族の病気」が数多く見受けられた。要因が複数になってしまうと貧困化に拍車がかかる傾向にある。