両親の離婚は、子どもにとって望ましいものではないでしょう。しかし、もし現実として自分の身に起こってしまったら、子どもは受け入れるほかありません。
その環境をどう受け止め、どのように乗り越えたのか、小学校卒業と同時に母親の実家近くへ引越し、母と弟の3人暮らしをスタートさせた三園優香さん(仮名・30歳)に、当時の思いと、親の離婚による影響をお聞きしました。
 
その環境をどう受け止め、どのように乗り越えたのか、小学校卒業と同時に母親の実家近くへ引越し、母と弟の3人暮らしをスタートさせた三園優香さん(仮名・30歳)に、当時の思いと、親の離婚による影響をお聞きしました。
 
突然の離婚。毎日泣きながら眠りに就いた
 
――ご両親の離婚を知ったときのことを教えてください。
 
「小学校卒業を控えたころ、地元の中学校の説明会や制服準備に関する手紙を母へ渡したときに、『卒業したらおばあちゃん家の傍へ引越すから、アナタはこの中学校へは行かないのよ』と言われたんです。『パパとはお別れになるから、ママのこと助けてね』との言葉で状況を理解しました。ただ、そのときは友だちと離れ離れになるショックの方が大きくて、両親の離婚ということへの実感はほとんどなかったです」
 
――それまでのご両親の様子などから、異変を感じるようなことはなかったのでしょうか?
 
「今思い返せば、小学校5年生の終わりころに母が私の部屋で一緒に寝るようになって、そのころから家族で出かけることもなくなっていたんですよね。でも、両親は家では普通に話しているように見えたし、父も毎日定時に帰って来ていたので、当時は特に何も感じませんでした。なので、私にとっては、離婚は突然すぎる出来事でした」
 
――その後、どのように現実を受け入れていったのですか?
 
「引越しの前日、父は私と弟を食事に連れて行ってくれたのですが、頭では『最後なんだ』とわかっていても、やっぱり実感はなかったんです。でも、引越し先に父がいなくて、父の物もひとつもなかったことで、『ああ、もう一緒に暮らせないんだ』って、ようやく実感しました。
 
 それからしばらくは、毎夜ベッドに入ると涙があふれてきて、泣きながら寝ていましたね。ただ、自分の学校が始まると急に毎日が慌ただしくなって、自分のことで精一杯。そうこうしているうちに慣れたというか、自然と受け入れていったような気がします」
 
寂しさを閉じ込め、「母の望む娘」として振るまう
 
――お母さまと弟さん3人の生活になって、優香さんご自身に変化はありましたか?
 
「母は離婚後、事あるごとに『片親だからって言われたくない』、『何かあればおばあちゃんに迷惑をかけることになる』と言って、私に厳しくなりました。だから私は、『しっかりしなきゃ』との意識を常に持ち、家事や小学生の弟の世話など、母の手助けも率先してやるようになりました。
 
 でもその反面、寂しいという本音や、学校での愚痴などが話せず、気持ち的には殻にこもるようになりましたね。『パパがいてくれたら』『もし離婚しなかったら』なんてことをずっと考えていたのを覚えています」
 
――お母さまとの関係性は?
 
「表面上は良かったと思います。私が思春期だったこともあって、離婚のせいで変な方向にそれるのを心配した母は、学校での様子や友だちのことなどをよく聞いてきましたが、私は心配かけないように、嘘のない範囲で母の望む返答をしていたので。ただ、安心した表情の母を見るたび、嬉しさと、心の内に気づいてもらえない寂しさとが入りまじった変な感情が湧いてきました。
 
 次第に『母はいい子の私しか見ていないんだ』とあきらめのような気持ちを抱くようになり、本音を聞いてほしい、寂しさをわかってほしいと思うことすらなくなっていきました」
 
父の代わりを求めて、年上の男性に依存
 
――両親の離婚を機に、たくさんの我慢をしてこられたのですね。寂しさを抑えることの影響は何かありましたか?
 
「誰にも言えず、母にもわかってもらえずに、寂しさを押し殺していくうち、“寂しい”という感情が一切湧かないドライな性格になったと自分では思っていました。でも、高校生になって、バイト先の30代前半の店長と親しくなったことで、抑え込んでいた父恋しさとか、見て見ぬふりをしていた寂しさが、堰(せき)を切ったようにあふれ出しました。
 
 いわゆる依存ですね。彼なしでは生きていけないと思うほどのめり込んだんです。ただ、やはり『母へ心配をかけてはいけない』という思いは常にあったので、バレないように付き合ってはいましたけど。彼と別れてからも、一回り近く年上の大人の男性ばかり求めていました」
 
――恋愛自体に、両親の離婚が影響したと感じることはありましたか?
 
「今思うと、甘えさせてくれてわがままを聞いてくれる人なら誰でもよかったのかなって感じるほど、常に1人以上彼がいました。寂しさを埋めて、父親から与えられるはずだった愛情を得るために、とにかく男性を必要とするようになってしまったんです。そんな恋愛とも呼べないような関係しか築けなかったのは、両親の離婚で父を失い、寂しさを味わったからだと思います。
 
 ただ、19歳の時に妊娠してしまって……。結婚できるという希望と、母がどう思うかという不安で悩んでいた最中、彼からおろしてほしいと言われ、『恋愛で得るものはない』『結局傷つくのは自分』と気づきました。それからは、男性を必要としなくなり、むしろ『詐取(さくしゅ)する生き物』くらいに思うようになりましたね」
 
――現在の恋愛観や結婚観は?
 
「どっちもしたいと思う気持ちはあるものの、しなくてもいいやという思いもあり、よくわかりません(笑)。自分も大人になったことで、恋愛や結婚がどんなものかはそれなりにわかるようにはなりました。でも、恋愛では自分の穴を埋められないこと、結婚に永遠の保証はないことを知っているので、あまり魅力を感じないんですよね。
 
 それなら、自分の好きなことに時間とお金を使って生きていきたい。もし分かり合える人に出会えたら、そのとき考えればいいやってくらいに思っています」