読売新聞オンラインより抜粋
2021/03/12 12:45
千葉県四街道市の市民団体が11日、東京電力福島第一原発事故後に住民が避難し、取り残された犬を題材にした紙芝居を同市の集会所で上演した。メンバーらは「原発事故は人間だけでなく動物も苦しめた。悲惨な事故を忘れないで」と訴えた。
タイトルは「福島の悲劇を生き抜いたコロとボス」。地震の直後、原発から約6キロの福島県双葉町内に住んでいた男性(79)は四街道市の妻の実家に避難することを決めたが、飼い犬のコロは連れていけなかった。
集まった住民30人が紙芝居に見入っていた(11日、四街道市で)
「残された僕は寂しくなりました」「どうしてこんなことになってしまったのか、犬の僕には全くわかりません」――。紙芝居はコロの目線で、原発事故の恐ろしさを伝える。ヤギやウシなどが次々と死に、コロもやせ細ったが、動物愛護団体の人たちに助けられる。男性と再会したコロは2019年4月、天国に旅立った。紙芝居は「原発事故さえなければ双葉の町で楽しく暮らせたのです。悔しいです」との言葉で終わる。
制作した市民団体「アオギリの会」は、事故直後から6年間、福島県南相馬市の仮設住宅に千葉の野菜を届け続けた。メンバーの高橋晴雄さん(82)は、人が消え、荒廃していく街を目の当たりにした。「原発事故がどれほど恐ろしく、取り返しがつかないものか思い知らされた」と語る。
今後は紙芝居を四街道市の子供たちにも見てもらい、事故が残した現実を伝えていきたいという。