「テキサスに帰っていつもの生活に戻り、飼い犬のベントリーと再会したい」。米国内で初めてエボラ出血熱に感染した看護師のニーナ・ファムさん(26)の
退院後第一声です。彼女は体内からエボラウイルスが消滅したことが確認され、24日(金)に退院を果たしました。重病から回復した後、最初に望んだことが
愛犬との再会…飼い主とペットの深い絆を感じさせるエピソードです。
【特集】エボラ感染者の飼い犬は、殺されるべきですか?
一方、米国のウォール・ストリート・ジャーナル 誌は10月9日(木)付けの記事で、スペイン政府が現地時間の8日夜、エボラ出血熱に感染した女性看護助手が飼っていた犬「エクスカリバー」を安楽死させ たことを伝えました。10月7日には、ツイッターなどのソーシャルメディア上に「エクスカリバーを救おう」という声が広がり、38万人を超える助命嘆願の 署名も集められましたが、スペイン政府の決定を覆すことはできませんでした。
これに対し、まったく対照的な措置を下したのが、米テキサス州です。ブルームバーグ通信の10月14日(火)付けの記事によれば、テキサス州ダラス市の ローリングス市長は13日、エボラ出血熱に感染した医療関係者の飼い犬を殺処分にはせず、保護観察下に置くことを表明したのです。
ペットを失った後、「ペットロス症候群」となる場合があります。ペットロス症候群とは、ペットを亡くしたことが原因で起こる、不眠や摂食障害、疲労感、身 体的な不調、うつ病などの総称です。ペットロス症候群の要因として挙げられるのが、ペットの死を自分のせいだと感じ罪の意識に極度にさいなまれる、ペット を失った悲しみがあまりに大きい…などです。今回のスペインのケースでいえば、この女性看護助手は自らもエボラ出血熱感染という大変深刻な状況です。それ に加えて、愛する飼い犬が安楽死とはいえ、殺処分となった事実をどのように受け止めたのでしょう?
スペインのケースでは、この犬がエボラ熱に感染していたかについて検査は行われなかったようです。米疾病対策センターによれば、ここまで、犬から人に感染
した、または犬が発症した事例は報告されていないとのこと。つまり、飼い主がエボラ出血熱に感染したケースで、飼い犬が及ぼす危険性は明らかになっていな
いのが現状です。そういった状況をふまえると、感染者のペットロスの懸念に加えて、人間と飼い犬間での感染などについて知見を得るという点からも、テキサ
ス州のように、感染者の飼い犬を保護観察下におく処置のほうが妥当のように思えます。
エボラ出血熱は、感染した本人のみならず、同居者、飼っているペットへの感染のリスクなど、広範囲な影響を及ぼす病です。純粋に医学的、科学的な問題だけ
ではなく、前述のペットロスのように人間の感情への二次的被害も与える可能性があります。また、病気そのものについて明らかになっていない部分が多いた
め、一刻も早い全貌解明が望まれます。