【北風と、太陽】/aico


あの『壮絶ガチバトル☆旅人身包みはがし対決!』から3年。


太陽に完敗した北風は、日々思い悩んでいました。


己の全力でぶつかった結果の、拒否。

対する太陽は、ありったけの優しさで旅人を包み込んだ結果の、勝利。


全力でぶつかっていくことが愛の最上級で、受け入れてもらうことが最終目的だと思ってきた北風にとって、「相手を受け入れる」ことに専念するという太陽の選択肢は、文字通り天地がひっくり返る程の衝撃だったのです。


「あのときの太陽、かわいかったな。あたしまであのこを好きになりそうだった。」


北風は、自分の一方的な自己主張を恥じ、己を責めました。

太陽のほほ笑みが、寝てもさめても頭を離れません。

そして、思い立ったのです。

「あたしも、太陽になろう!」


それからの北風は、光を探しては集め、陽だまりを見つけてはカラダに取り込みました。

太陽の真似をして、全ての生き物に優しくほほ笑んでみたりするうちに、キレやすかった性格も徐々に穏やかなものへと変わったように思えました。



― 一方の太陽は、あの勝利からも、相変らずのんびり過ごしていました。

むしろ、勝負のことなんぞ忘れていました。


ただ。。

あの時の旅人は、既に太陽の元を去ってしまっていました。

弱い旅人にとっては、その無垢なあたたかさとまぶしさが疎ましかったのでしょう。

それでも、太陽は彼を恨んではいませんでした。


…いえ、本当は恨めなかったのです。


彼女が泣けは、世界に暗闇が訪れてしまう・・・それを知っていたからです。

「そんな無責任こと、できないもん。」

太陽は、悲しくも、強い心の持ち主でした。


-------

ある日、2人の下に、突然の雨に打たれて困っている旅人が通りかかりました。


旅人の着衣は、ずぶぬれ。


先に見つけた太陽が、その温かな光を送ります。

うつむいた旅人が、光に気付いて顔を上げかけた瞬間、よそから声がしました。


「まって太陽!その役目、あたしにも手伝わせてもらえない?」


振り返った太陽は、目を疑いました。

そこにいたのは、すっかり太陽にそっくりになった…北風だったのです。


「あなた・・・風は、どこへ?」

北風は笑って答えます。

「人を吹き飛ばすだけの風はもういらないの。あたしは太陽みたいになるの。だから・・」


そういって北風は旅人を照らし始めました。

太陽は、その光を絶やすことが出来ないので、仕方なく同じように旅人を温めます。



旅人が顔を上げていいました。

「あぁ、なんて暖かいんだ。おかげで僕のコートも乾いたよ。ありがとう2人とも。」



その言葉にうれしくなった北風は、なおも強く旅人を照らします。



もっと喜んでほしくて。

もっと役に立ちたくて。

もっと、もっと、太陽みたいに。

いっそ、いっそ、太陽を追い抜きたい。。。



様子がおかしいことに気付いた太陽が声をかけます。

「北風!それ以上は・・・」

旅人も声を張り上げます。

「暑い!これでは干からびてしまう!!」



哀しいことに、その声は、もう、北風の耳には届きませんでした。

暖めたかったはずの旅人も、目に映ってはいないようでした。



・・・そして、北風自身の光が、どんどん小さくなっていくことにも。。。



…もう…気付けませんでした。




北風は、大事なことを忘れていたのです。

彼女は風。そのカラダには『芯』が無いことを。


いくら見た目が太陽とそっくりだって、芯がなければ、ハリボテの光はすぐに燃え堕ちるだけ。



北風はあれよあれよという間に、また、もとの北風に戻ってしまいました。

やっとわれに返った北風は、小さく呟きました。

「あたしはどうしたって、あなたには、なれないのね。」


そして、旅人と太陽の視界から逃れるように、ひゅるひゅる帰っていったのでした。




それからというもの、北風は分をわきまえて、冬近くにしか姿を現さなくなりました。

太陽は、相変らず、のんびり輝き続けています。

北風のことなんぞ、忘れていました。


・・・いえ、忘れようとしていました。




彼女は太陽。




そうカンタンには、泣けないのです。



【― 完 ―】



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